今では当たり前に毎日履いているパンティストッキングですが、日本に上陸したのは戦後のことです。今日はそのストッキングの歴史を振り返りながら、日本初のシームレスストッキングやパンティストッキングを作ったアツギ株式会社の歴史と私の愛用しているアツギさんパンストをご紹介します。
ストッキングの歴史
あまりに毎日履いているので日本では何時から流通しているかなんて考えた事もありませんでしたが、調べてみると、興味深い・・・というか驚きの歴史が含まれていました。
ナイロン発明
ナイロン素材は、アメリカのウォーレス・カロザースという化学者が1937年に発明した化学繊維でした。当時彼はアメリカの化学会社デュポンで有機化学部門のリーダーとして研究をしており、世界で初めて化学繊維を発明した人でした。
自殺した無名の偉大な化学者ウォーレス・カロザース
ウォーレス・カロザースは世界で初めて化学繊維を作った凄い人であるにも関わらず、彼は無名のまま亡くなっていました。
彼の発明したナイロン繊維は、衣類などの原料が綿から合成繊維へと大変革を遂げさせるなど、まさに世界を変える発明でした。しかし「ナイロン」は彼の所属していたデュポンの企業秘密だったため、日の当たる事はなかったのです。
そんな彼は若い頃から鬱病を患っていたそうで、次第に「何も達成していない」と悲観的な考えに捕われ、更に妹が肺炎で亡くなるなど不幸が起こり、妹の死後3ヶ月ののち、フィラデルフィアでレモンジュースに青酸カリを混ぜて服毒自殺しました。享年41歳でした。
アメリカ科学振興協会による表彰
世界の繊維業界を革命的に変化させたナイロンを発明したウォーレス・カロザースは自身の発明がいかに凄いものだったか評価されずに亡くなりました。しかし2000年11月、アメリカ科学振興協会が表彰しました。
アメリカ科学振興協会は、1848年に創設された「科学者間の協力を促進し、科学的自由を守り、科学界からの情報発信を奨励し、全人類の幸福のために科学教育をサポートする組織(wikipediaより)」だそうです。
個人的に1848年に創立されたというなら、ウォーレスが生きていた頃に表彰していたら・・・と思います。もちろんその内容が企業秘密であるため内容を明かせないとはいえ、何らかの方法で「科学者を守る」ことも出来たのでは?と思うからです。優秀な頭脳が自殺で失われたのは非常に残念です。
ストッキングの歴史
ストッキングの素材である「ナイロン」の歴史を振り返ったところで、次は「ストッキング」の発明から日本への上陸時期やその経過について触れます。
ストッキングとは
今の私たちが「ストッキング」と聞いて思い浮かべるのは「パンティストッキング」で、下着の上から履く、足のつま先からウエストまである靴下です。しかし「パンティストッキング」とは和製英語でした。ちなみにアメリカでは「パンティホーズ(pantyhose)」、イギリスでは「タイツ(tights)」と表現するそうで、日本とは全く違います。
日本で「タイツ」と呼ばれるものは主に冬用である厚手のストッキングの意味になってしまいます。でもこういう呼び名での違いはとても判りやすく、日本的だなあと思いますw
1963年アメリカで「ストッキング」発売開始
いわゆる「パンティストッキング」はアメリカで1963年に発売され、大ヒット商品になりました。しかし当然日本では「舶来品」の高級品で庶民の手には届かないものでした。
日本で初めてパンストを発売した「ATSUGI」
アメリカで大ヒットした「パンティストッキング」は当然日本にも輸入品として流通しました。しかし当然「高級品」で、一般女性の手に入るような商品ではありませんでした。そこに目をつけたのが現在の「ATSUGI」で、創業者の堀禄助(ほりろくすけ)氏がアメリカから商品を取り寄せて、日本での開発に踏み切ったのです。
詳しい歴史、ストッキング開発についてのお話はATSUGIさんのHPでご覧になれます。良かったらどうぞ。
「片倉工業海老名工場」として独立後「厚木編織株式会社」を設立
現在のATSUGIの前身である「厚木編織株式会社」は1947年に創業した会社で、当時は捕鯨用のロープが主な取り扱い製品でした。創業者は堀禄助(ほりろくすけ)氏。終戦して2年後の創業です。
そんな堀禄助氏は「片倉製糸紡績」出身でした。片倉と言えば、2014年に世界遺産に登録された「富岡製糸場」です。まさかこんな繋がりがあるとは知らなかったので感動しちゃいました。でも「糸」に携わった方ですから、当然の流れだったのでしょう。
しかし「捕鯨用ロープ」を主に作っていた会社が何故「ストッキング」開発に着手したのか。それは、堀禄助氏が戦後の女性達の意識や社会情勢の変化をいち早く感じ取っていたからだそうです。
当時は食糧どころか衣料品すら配給される時代。しかし働き手である男手の無い家では女性達が社会に出て懸命に職を求めていました。そんな時代であっても、女性達は着物などの和服をアレンジして洋服を作ったりして、自分なりのお洒落をしていたそうです。
2016年に放送されていたNHKの朝の連続ドラマ小説「とと姉ちゃん」でもそういうシーンがありましたね。浴衣をほどいて作ったワンピースを着てお洒落を楽しむ女性の姿は見ているだけで心が明るくなる場面でした。女性は「どんな時でも美しくありたい」というのは、変わらない願いなのだと思います。
1952年「ストッキング」を日本で発売開始
日本で「ストッキング」が発売され始めたのは1952年だったそうです。しかし当時のストッキングは後ろに縫い目のあるタイプ、いわゆる「シームライン」入りのもので、その縫い目がいつ解けるか心配しなくてはいけないものでした。和装よりも気軽に動きやすい洋装文化になりつつあったにも関わらず、脚を包むストッキングはまだまだ改良の余地があったのです。
1955年「シームレスストッキング」を発売
厚木は、膨大な資金を投じて解ける心配の無い「ストッキング」の開発に取りかかり、1955年、ついに縫い目の無い「シームレスストッキング」を開発、販売を開始しました。
とはいえ、まるで「何も履いていない」ように見えてしまう「シームレスストッキング」は、当時の日本女性にとっては恥ずかしくて履けないものだったそうで、女性達に定着するまでには時間が掛かったようです。
とはいえ、発売開始してから6年後である1961年には抵抗無く「シームレスストッキング」を履く女性が街を闊歩するようになっていたそうです。
ちなみにストッキングで世に知られるようになっていた「厚木編織株式会社」は1960年に「厚木ナイロン株式会社」と改称、株式の上場も開始しています。
ミニスカートの流行と「パンティストッキング」発売
世の女性達の着るものは洋服が主流になり、「ストッキング」も当たり前に履かれるようになった頃、日本に「ミニスカート」の大流行が起こります。こうなると別の悩みが生まれます。ガーター部分が見えてしまうのです。
この頃はまだガーターで固定してストッキングは履かれていました。しかしこれではミニスカートに対応できません。ガーターが見えるどころか下着まで見えてしまう心配がありました。
そこでアツギは、欧米では既に流行しはじめていた「パンティホーズ(pantyhose)」、日本で言う「パンスト」の開発に取りかかり、1968年、ついに「パンティストッキング」の製造、販売を開始したのです。
ガーターベルト無しに履けるパンストは瞬く間に大流行したそうです。確かにしっかり包まれる安心感がありますから、まだ履いた事のない女性にも好意的に受け止められて、着用に踏み切らせたのだと思います。
パンストの開発が世の中の女性をよりアクティブにしたことは間違いなかったでしょうね。
パンストの欠点「たるみ」問題
パンストは女性なら誰もが履くファッションアイテムとなりましたが、まだまだ欠点がありました。それは「たるみ」です。
確かに履いているうちに足首のあたりにたるみがでる物はあります。もう15年以上も前だと思うのですが、お金をケチって買った激安のパンストでそれは起こりました。外出中に足首にたるんでしまい「ぎゃあああ」となったのですww「パンスト代はケチってはいけない」と痛感した大事件です。ものすごーく恥ずかしかった・・・。
今はもうそんなものはよほどの安物、粗悪品でなければ無いと思うのですが、パンスト発売時には当たり前の欠点だったようで、大変だったでしょうね。
世界初のフルサポーティパンストの開発
いつ「たるむ」のかと心配を強いられる「パンスト」を改良すべく、1974年、アツギは新たな開発チームを立ち上げました。それは病床にあったという創業者堀氏が自ら陣頭指揮を取ったそうです。
そのプロジェクトチームは「ストッキング」を縫い上げている糸の開発から着手し、「カバリングヤーン」という伸びる新しい素材を生みました。それで発売されたのが「スリムライン」「ビューティライン」「サポートライン」でした。
現代女性の美脚と快適さを追求して、今年で70周年の「ATSUGI」
縫い目の無い「シームレスストッキング」やガーターベルト無しで履ける「パンティストッキング」、そして世界初のたるまない「サポートタイプストッキング」の開発、販売後も、ATSUGIは更なる改良、開発を続け、日本女性の美脚を守ってくれています。
そんなATSUGIは今年で創業70周年。きっとまた何かをやってくれるのではないかと楽しみにしています。
ATSUGIのストッキング
さてストッキングやATSUGIの歴史を振り返ったところで、私の愛用しているストッキングをご紹介。といっても、「ATSUGI」を率先して選ぶようになったのはつい最近です。
理由はどこのメーカーだったか失念したのですが、その履き心地があまりに悪かったからです(涙)決して安いものではなく、日本製だったのですが、伸びが悪い上に、すぐに伝染してしまったのです。そこでメーカーを意識して選ぶようになったところ、一番フィットして感触も気に入ったのが「ATSUGI」だったのです。
パンティストッキング
一番頻繁に使うのは無地、肌色タイプのストッキングです。色々出ていますが、経済的に3足組のものを選んで買っています。もちろん日本製で。
ATSUGI(アツギ) ナチュスト 伝染しにくいストッキング(3足組)
私がよく履いていたのは「ナチュスト 伝染しにくいストッキング」の3足組でした。何故過去形なのかと申しますと、今期はまだ買ってないからですw
色は「ヌーディベージュ」を選んでいました。だいたい4、5回くらいは履けて、たるんだ記憶は皆無です。もう4月ですし買わなきゃなので、明日買ってこよう〜。
冬用タイツ
冬も終わりかけですが、一応ご紹介しておきます。今期私がよくお世話になっていたものは、ATSUGIタイツ30デニールと80デニールと110デニールです。この商品を愛用していた理由は「光発熱」による保温効果があったことと「毛玉ができにくい」点です。
「光発熱」での保温効果は重要です。最近は汗に反応するタイプの保温効果をうたった物が多いのですが、それは肌の乾燥を招くので個人的にNGなのです。
吸湿した水分を元に発熱するユニクロの「ヒートテック」などの肌着は水分を奪うので乾燥します。実際、私が以前ヒートテックを試しに着てみたら肌のかゆみを覚えたため、着るのを止めました。乾燥肌の人には良くないと思います。
そんなわけで、私が「暖かい」をうたっている商品を買う時にはその仕組みを重視しています。で、ATSUGIさんのこのタイツは「吸湿タイプ」ではなかったために購入したのです。
ATSUGI TIGHTS 30デニールタイツ 2足組
こちらが30デニールです。二足組で売られています。で、二つタイプがありまして、引き締め効果のある、無しがあります。私は引き締め効果ありを買っていました。
日本製です。
バックマーク付き。ここで一つメーカーさんにお願い。ここに30とか数字をかいてくれませんかねえ。私のように複数のデニールを使い分ける人には「あれこれどれだっけ??」となるので。でも印刷する分値段上がるなら我慢します。てか自分で油性ペンで書けばいいのかな?でもかっこわるいからやだなあw
太い脚を出してごめんなさいwでもご覧の通り、うっすら透ける感じが気に入っています。生地はとても柔らかく、伸びやすくて履きやすいし、温か効果もあって申し分の無いタイツです。来年度もこれを買う予定です。
そうそう、この商品は他の人の口コミでは「透けないじゃん!」というのもありました。でもその原因は、その方のおみ足が細かったせいではないか・・・と思っております。うらやましいw
「ATSUGI TIGHTS 80デニールタイツ 2足組」の写真は撮ってませんでした。来年撮影して載せます。商品ですが、ある程度の厚みがあり、今日は寒いなという日に履いていました。
「ATSUGI TIGHTS 110デニールタイツ 2足組」はデニールが110なので「かなり寒い」時に履いていました。で、実際寒くなかった記憶です。ちなみにこのシリーズには140デニールの極寒仕様のものもあります。冷え性な方はその140が最強かも?気になる方は来シーズンお試しください。
最後にひとこと
パンストは女性には欠かせないファッションアイテムです。毎日履いている、履くものですから、より快適に過ごせる物が嬉しい。ATSUGIさんはそんな女性の気持ちによりそって、今年で70周年になるという会社。これからもその歴史に恥じない、素晴らしいストッキングを作ってほしいです。