恥ずかしながら、防疫のため「切り花」の輸入はさほど無いと思い込んでいました。しかし韓国産の白菊「白馬」が日本へ通年輸出されることになったという報道を見つけ、ちょっと驚いてしまったので取り上げます。
韓国産の白菊「白馬」通年輸入へ
まずはソースをどうぞ。
【ソウル聯合ニュース】韓国農村振興庁は30日、韓国産のキクの品種「白馬」が四季を通じて日本に輸出されるシステムが整ったと明らかにした。
白馬は直径約13.6センチの白いキクで、供花や花輪などに使われる。
2004年に農村振興庁が開発したこの品種は、見栄えがよく寿命が約1カ月と長いことから日本で好評を得た。
同庁は「日本は年間約20億本のキクを消費し、このうち3億本を輸入が占める大きな市場だ」としながら「(白馬は)暖房費の負担が大きいため冬季の生産が難しく、主に8~9月の夏季にのみ輸出していた」と説明した。
これに対し農村振興庁は中国海南省に白馬の生産拠点を設け、年中生産できるシステムを備えた。
日本の輸入関係者や葬祭業者らは、白馬が純白で大きく花弁が多い上、収穫後の寿命が他の品種の2倍と長い点を高く評価し、輸入を希望しているという。
農村振興庁は今年2月から今月まで計14万本を日本に輸出した。今後も中国内での生産量拡大に向け、産業界への支援を行うという。
朝鮮日報:2019/04/30 14:30
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まさか韓国から菊の花が輸入されているとは思いませんでした。
年間13億本以上輸入されている切り花
冒頭で触れたように、防疫の問題があるので「切り花」がたくさん輸入されているという発想がありませんでした。しかし、昭和60年に「切り花」への関税が撤廃され始めて以降、日本への切り花の輸入は増えており、現在では年間13億本以上輸入されていました。ソースはこちら。
切り花輸入13億本超 過去2番目規模 18年
2018年の切り花輸入量(サカキ・ヒサカキ類を除く)が13億1743万本と、過去最大の12年に次ぐ規模となったことが、農水省の植物検疫統計で分かった。国内の生産基盤弱体化に加え、猛暑などの天候不順で国産の出回りが伸びず、輸入物への代替需要が強まった。菊の輸入量は過去最高を更新した。切り花は既に大半が関税撤廃されており、輸入攻勢が年々強まっている。(三宅映未)
切り花の輸入量は、東日本大震災後の消費回復に「円高ドル安」が重なった12年の13億4300万本がピーク。いったん落ち着いたが、16年から再び右肩上がりで推移。18年は当初、国産の相場低迷により輸入は伸び悩むとの見方があったが、猛暑で国産が品薄となると夏以降に急増した。
菊類は最多 3・4億本
品目別で、大きく伸びたのが菊類だ。輸入量は3億4108万本で前年より1・8%増え、過去10年間で最多。国別ではベトナム産が10・9%増の8314万本と大きく増えた。この5年間で1・6倍となっており、スーパーを中心にスプレイ菊を輸入物で手当てする動きが強まっている。
中略
輸入が増える背景には、国産の出回り減がある。農水省によると、17年の国産花きの生産量は37億本と、この10年で2割減り、過去最低を記録。国産の生産基盤強化が課題となっている。
業界関係者は、国産の生産回復には有利販売が欠かせないと指摘。「マーケットが今後拡大するとは考えにくく、専門店は販売に苦戦している。スーパー向けなど販売先を捉えた産地戦略が一層重要になる」とする。
一方、バラは8・9%減の5709万本。主力のケニア産が秋以降の航空機運賃の値上げ、インド産と韓国産が自国での消費増加により、日本への仕向けを抑えた。
日本農業新聞:2019年01月17日
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菊だけでなくバラまでも韓国産があったのですね。ちょっとショックです。
植物防疫所
外国の植物や果物は、その国の病害虫が一緒に入ってくる可能性があるため、日本の輸入の際に、全量あるいは抽出検査を行っています。この検査は毎回行われており、日本国内の植物に害が及ばないようにしてくれています。
詳しくは植物防疫所のHPをどうぞ。
植物防疫法
日本へ入ってくる動植物を厳しくチェックし、国内の農業に影響を及ぼさないようにするための法律が「植物防疫法」です。最近、この法律はより厳しくなり「検査証明書」無しには持ち込めなくなりました。
違反したら3年以下の懲役、又は100万円以下の罰金とあるので、かなり厳しくなりました。しかし日本国内への悪影響を食い止めるためには必要な措置だと思います。
果物のお土産はやめておくのが吉
学生時代、友人がフランスで買った花束を空港で没収されていました。本人は「花束くらい大丈夫だと思ったのに」と言っていましたが、何の検査も受けていない街角の花屋で購入した花束を日本国内に入れるのは、今から考えたら「絶対ダメ」な行為です。
しかし個人で楽しむ植物や果物くらいなら平気そうだと買ってしまい、空港で没収される人が後を絶ちません。せっかく買っても没収されるのはもったいないので、どういうものがダメなのか知識として知っておくと良いでしょう。
これらの果物が持ち込めない理由は、ハエや蛾などが一緒に入ってくる危険があるからです。詳しいことは画像付きのリーフレットをどうぞ。ハエや蛾などの写真が苦手な人はご注意ください。
持ち込み禁止の植物について(リーフレット2枚)*pdfファイルです
http://www.maff.go.jp/pps/j/guidance/leaflet/pdf/l_jp-2.pdf
外国へも不用意に持ち込まないこと
国内に持ち込む果物や植物を厳しく制限しているのは日本だけではありません。かつて、ニュージーランドに入国しようとした女性がレモン6個をポケットに忍ばせていたために帰国されたことがありました。ソースはこちら。
ズボンにレモン6個隠した女性、NZ税関が香港へ送還
【3月24日 AFP】厳格な動植物防疫法を持つニュージーランドに、ズボンの中にレモン6個を隠して違法に持ち込もうとした女性が、香港(Hong Kong)に送還された。
ニュージーランド・オークランド(Auckland)の空港で21日、入国者をチェックする探知犬がレモンの密輸を発見した。レモンを持ち込もうとした女性は、自家製の肝臓治療薬のために必要だと主張。だが税関当局者は、レモンの持ち込みは国内作物の保護のために法で禁じられていると淡々と語り、女性を次の帰国便に乗せた。
ニュージーランド第1次産業省のクレイグ・ヒューズ(Craig Hughes)報道官は、「彼女の言い分は、レモンが彼女の肝臓などに良いということだった」と述べ、「それは真実かもしれないが、その主張は、害虫や疫病を持っているかもしれないフルーツを違法に持ち込んでニュージーランドの園芸業を危険にさらすことをなんら正当化しない」と語った。
ズボンの中に動植物を隠してニュージーランドに持ち込もうとする人が水際で止められた例は、今回が初めてでない。2013年にはベトナムの男性がオークランドの空港に魚を違法に持ち込もうとしたが、カーゴパンツのポケットから水がしたたっているのを発見され、失敗に終わっている。(c)AFP
afp:2016年3月24日 20:43
ズボンにレモン6個隠した女性、NZ税関が香港へ送還【3月24日 AFP】厳格な動植物防疫法を持つニュージーランドに、ズボンの中にレモン6個を隠して違法に持ち込もうとした女性が、香港(Hong Kong)に送還された。
外国から病害虫が入ってきた結果、自国の農業が危機に直面する可能性は十分ありえます。個人的に、帰国させたことに賞賛を送りたい。国内農業を守る毅然とした態度に惚れ惚れします。
切り花の輸入状況
農林水産省切り花についての資料を公開していました。
花きの現状について 農林水産省(平成30年10月)*PDFファイルです
http://www.maff.go.jp/j/seisan/kaki/flower/attach/pdf/index-45.pdf
平成31年の資料が公開されていました。
http://www.maff.go.jp/j/seisan/kaki/flower/attach/pdf/index-47.pdf
切り花の国内出荷量と輸入量
その資料によるとしている「切り花」の出荷・輸入状況は、関税が撤廃され始めた昭和60年の輸入比率は3%ですが、平成29年には27%にまで増えています。
主な輸入元
日本には四季があって色々な種類の花を楽しめますが、その反面、安定的に花を生産できないため、比較的暖かな気候である国からの輸入が多い傾向です。
花の種類により違いはありますが、カーネーションはコロンビアからの輸入1位です。コロンビアは、年間を通じて温かで、温度を保つための燃料も掛かりません。そのおかげで沢山の花を生産できるため、世界で一番カーネーションを輸出できるのです。他に、日本国内で需要の多目なキクはマレーシア、バラはケニアから、ユリは韓国からの輸入が多い状況です。(平成29年度の場合)
中国産のカーネーションや韓国産のユリなんてあって、正直とてもショックです。しかし綺麗な花を飾って楽しみたい人は、より安いものがありがたいのも事実。とはいえ、輸送のためのコストや手間を考えると、国内での生産が一番安上がりなのでは?と思いました。
流通システムが確立していない国内
国内の切り花の管理や輸送は輸出してくる外国に遅れを取っていました。資料は、カーネーションについてのコロンビアと日本の違いです。
コロンビアはなんとお花を摘んでから10日後に日本の小売店に届いています。しかし日本はカーネーションを摘んでからその日に出荷されて3日後には店に並べられる環境です。
これほどの日数の違いがあるのに、コロンビア産のカーネーションに売り上げを食われているなんて、正直なところ呆れるレベルです。
もちろん、小さな花農家だけで温度管理のための機材などを導入するのは厳しいでしょう。しかし「小さいから無理」だと言っていたら、外国産の花にもっとシェアを奪われてしまいます。
例えば、県や地域などで一括して花を低温で回収、運ぶ車や機材を皆で費用を負担して買い、市場へ運ぶようにするなどの温度管理を徹底しやすい仕組みを作るべきです。個人では無理なら集団でやるしかない。是非に頑張ってほしいです。
国内の花農家を応援する
食べられない花を作って生計を立てる花農家は、時代によっては白い目で見られる業種だったと聞いたことがあります。しかしお花は、心を癒したり、喜ばせてくれる存在です。
現在、国内の切り花の売り上げは減少傾向にあります。血となり肉となる食べ物を作る農家ではありませんが、心の栄養をくれる花農家が減ってしまわないように、今後はもっと切り花を買おうと思います。
切り花を楽しむために延命剤を使おう
綺麗な花を安く買えるのは消費者としては嬉しいことです。しかしやはり国産の花を買って応援したい。しかし生花を飾って楽しむためには、毎日水を変えるなどの少しの手間が必要です。そうなると、不慣れな消費者は「面倒くさい」と敬遠してしまうのです。私もそんな一人です。
しかし明らかに長持ちさせてくれる栄養剤もあり、我が家ではそれを活用して、切り花の延命を試みています。いつも買うお店では、切り花の延命剤「美咲」というものをつけてくれるのですが、それを水に入れておくだけで明らかに長持ちするのです。水を取り替える必要はなく、「美咲」入りの水を継ぎ足すだけです。
最後にひとこと
かなり個人的な意見ですが、葬儀のときに棺の中に韓国産や中国産の菊を入れられるなんて絶対に嫌です。なので、国内の菊農家を支えるために、もっとマメにお供え用の菊のお花を買おうと思います。