11月23日は「勤労感謝の日」です。すっかり定着した「国民の休日」ですが、この祝日は本来「新嘗祭(にいなめさい)」の休日で、皇室の最も重要な祭儀の一つです。今日は戦後、GHQに付け加えられた「勤労感謝の日」と「新嘗祭」そして一代一度の祭儀「大嘗祭(だいじょうさい)」について学びます。
国民の休日
現在ある「国民の休日」は、1948年に公布・施行された「国民の祝日に関する法律(祝日法)」で定められた休日で、16日あります。ハッピーマンデー制度という非常に馬鹿げたルールで日にちが変更されているので、忘れないために「本来の日にち」を含めて記載しておきます。
- 1月1日 元日
- 1月第2月曜日 成人の日。元は1月15日
- 2月11日 建国記念の日
- 2月23日 天皇誕生日
- 3月春分日 春分の日(年によって日にちは変わる)
- 4月29日 昭和の日 元は昭和天皇誕生日
- 5月3日 憲法記念日
- 5月4日 みどりの日。
- 5月5日 こどもの日
- 7月 第3月曜日 うみの日。元は7月20日
- 8月11日 山の日
- 9月第3月曜日 敬老の日。元は9月15日
- 9月秋分日 秋分の日(年によって日にちは変わる)
- 10月第2月曜日 体育の日 元は10月10日
- 11月3日 文化の日 元は明治天皇の誕生日。「明治の日」であるべき日。
- 11月23日 新嘗祭 勤労感謝の日
*個別記事のあるものはリンクになっています。
勤労感謝の日
「勤労感謝の日」とは「勤労をたつとび、生産を祝い、国民たがいに感謝しあう」趣旨の休日です。日にちは、11月23日と祝日法によって、戦後、定められました。
GHQによって付け加えられた休日
11月23日は、皇室の最も重要な祭儀「新嘗祭」が行われており「新嘗祭」という休日でした。しかし第二次世界大戦後、またしてもGHQの余計なお世話で、同じ日に「勤労感謝の日」という休日が加えられたのです。
その理由は、日本国民と皇室の関係切り離しが目的だったようです。実際その目論みは上手く働いて、11月23日が新嘗祭だと知らない人も増えています。これは非常に悔しい。
新嘗祭(にいなめさい)とは
今年収穫出来た五穀を喜び、祝い、来年の豊穣を祈願するのが「新嘗祭」で、皇室が代々その祭儀を執り行っています。
その年の新穀(しんこく)を宮中でお供え、感謝し、自ら召し上がって来年の豊作を祈って下さるのです。お米が主食である日本人にとって最も大切なことで、これからもずっと続けてお祈りしていただかなくてはいけないことです。
一番古い休日
GHQによって「勤労感謝の日」を同じ日に付け加えられたものの、飛鳥時代からあったと伝えられている「新嘗祭の日」ですから、最古の休日であることは代わりありません。そして皇室にとって最も重要な宮中祭祀の一つともされており、その祭儀に備えて、天皇陛下も準備されるそうです。
その準備とは明治天皇の玄孫である竹田恒泰氏が度々テレビ等のメディアで発言なさっていますが、長時間の正座での祭儀のため、日常生活の中で正座をする機会を増やし、練習されることです。
今上天皇・皇后も祭祀にはきわめて熱心であり、諒闇(服喪中)や病気を除くとほとんどの宮中祭祀に代拝を立てず御自ら出席している。
祭祀に関しては、事前の潔斎と平安装束を着用する事に加え、長時間の正座が必要であり、生前の昭和天皇は祭祀が近づくと、正座してテレビを視聴するなど、意識的に長時間正座することを心がけていたという。今上天皇も新嘗祭の時節が近づくと、昭和天皇と同様に正座の練習をするとのことである。
在位20年を経た2009年(平成21年)以降は、高齢である今上天皇の健康への配慮、負担軽減のため、祭祀の簡略化や調整が計画、実施されている。
wikipedia:宮中祭祀
宮中祭祀 - Wikipedia
宮中祭祀を重用視する天皇とそうでもない天皇もいらっしゃったようで、歴代天皇も侍従に「代拝」させる事もあったそうです。
本来の日にち
現在は11月23日となっていますが、本来は旧11月の第2の卯の日に行われていた祭儀でした。
ただ明治時代になって「太陽暦」が入ってきたため、それに合わせると、場合に年を越してしまうことがあると判り、その年の「太陽暦」における11月の第2の卯の日が23日だったので、以降11月23日を「新嘗祭」の日としたのです。
ちなみにもし今年(2017年)にもとどおりに祝おうとすると、まず旧暦では11月13日が第2の卯の日なので、それを新暦にあてはめると、12月30日に祭儀をおこなうことになります。やはりちょっと日程が厳しいですね。
そんな理由で、実は11月23日に深い意味はないのです。
いつから行われていたのか
「新嘗祭」は、飛鳥時代の皇極天皇の頃(642年)から行われていたと伝えられていますが、戦国時代に入ると一時中断されていました。
その後、江戸時代に入り、東山天皇の頃(1687年)に「大嘗祭(だいじょうさい)」、桜町天皇の頃(1740年)に「新嘗祭」が復活したと言われています。
1代一度限りの「大嘗祭(だいじょうさい)」
毎年行われる「新嘗祭」ですが、1代1度限りの「大嘗祭(だいじょうさい)」もあります。
「大嘗祭(だいじょうさい)」とは、即位した天皇が最初に行う「新嘗祭」のことで、今上天皇が行ったのが平成2年(1990年)でした。その前は当然昭和天皇で、昭和2年(1928年)に「大嘗祭」がありました。
今上天皇は「退位」の意向を示しておられますから、もしそれが実現した場合、現皇太子殿下が即位された暁に「大嘗祭」を見ることができるでしょう。
2019年「大嘗祭」が行われることに(2018/11/11 追記)
やはり今上天皇は来年退位し、来年、皇太子殿下が即位の礼ののち、「大嘗祭」が行われることになりました。
しかし、それが「政教分離の原則に反する」と、安倍総理の靖国参拝を批判してきた市民やキリスト教徒や仏教徒などが裁判を起こしていました。ソースはこちら。
即位礼と大嘗祭は違憲と提訴へ
120人が東京地裁に来年催される新天皇の「即位の礼」や皇位継承の重要儀式「大嘗祭」などは、憲法が定める政教分離と国民主権の原則に反するとして、全国の少なくとも約120人が、国に儀式への公金支出の差し止めを求め、東京地裁に提訴することが8日、関係者への取材で分かった。提訴は12月上旬を目指している。
昭和から平成の代替わり儀式を巡っても、違憲性を問う訴訟が各地で相次いだが、原告側の代理人によると、来年の天皇代替わりに伴う儀式を巡る違憲訴訟は、今回が初めてとみられる。
原告は、安倍晋三首相の靖国神社参拝などの違憲訴訟に関わってきた市民やキリスト教、仏教などの宗教関係者ら。
共同通信:2018/11/8 19:2211/8 20:48updated
https://this.kiji.is/433168142421804129?c=39546741839462401
日本国の「象徴」である天皇の即位などの儀式を宗教と考える人たちもいるのですね。彼らとは未来永劫話が合いそうにありません。
勤労感謝の日と神嘗祭は別物に
wikipedaの記載にあったのですが、「勤労感謝の日」をメーデーの日に動かそうという動きがあったそうで、それは非常に好ましい動きだと思います。
一時は5月1日のいわゆるメーデーに勤労感謝の日を移動させる案が浮上したが、現在は頓挫している。
wikipedia:勤労感謝の日
勤労感謝の日 - Wikipedia
「勤労感謝の日」も「勤労をたつとび、生産を祝い、国民たがいに感謝しあう」趣旨で素晴らしい内容だと思いますが、収穫を感謝し来年の豊作を祈る「新嘗祭」とは性質が全く違います。
「新嘗祭」は日本の豊穣を祈り、国民が今年も食べられた事を感謝し、来年もまた同じように食べられるように今上天皇が祈って下さる重要な祭儀です。11月23日は「新嘗祭」だけの休日と定めるのが自然なことだと思います。
参考文献
日本文芸社「和のしきたり 日本の暦と年中行事」監修国立歴史民族博物館教授新谷尚紀氏
最後にひとこと
今上天皇が皇太子殿下に譲位されるお話が出ています。あくまでの私見で不敬を承知で申し上げますが、出来れば陛下ご自身のお命を全うされた結果、平成の世が去れば良いのにと思っています。
「天皇」は、誰とも代われない存在ですから、国民と共に時代を歩いていただきたい。私個人のわがままでしょうが、それが一番だと思えてなりません。
追記
ご譲位が行われ、令和の世になりました。譲位前は色々と思うことがありましたが、悲しみの中での代替わりと違い、寿ぎの空気に満たされた譲位はとても素晴らしかった。何事もわからないものですね。令和の世が幸せに満ちた時代になりますように。