令和2年(2020年)8月4日に放送されたTBSのバラエティ番組「教えてもらう前と後」で、トリンドル玲奈さんが松並木のガーゼケットを紹介していました。私はすでに愛用しているのでその良さを知っています。しかし最近松並木のやわらかガーゼアイテムを増やしたいと思っていたため、久しぶりに松並木の商品を探していたら、松並木の製品ではない日本製のリネン100%シーツに興味を覚え、どんな感触なのか知りたくなって思わず買ってしまいました。感想です。
麻とリネン
品質タグに「麻」と表記されているスカートやパンツを持っていますが、汗をかいても足にまとわりつくことがないので好きです。しかし私の知識はその程度でした。
しかし今回記事にするために調べたら「麻」と「リネン」は厳密には違うものだと知って驚愕。せっかくなので簡単にまとめておきます。
麻とは
麻とは、大麻(タイマ)、苧麻(チョマ)、黄麻(オウマ)、亜麻(アマ)、マニラ麻など世界中にたくさんある麻の総称です。亜麻(アマ)が外国から入ってくる戦前までは、日本でいう麻とは、大麻(タイマ)と苧麻(チョマ)を指していました。
以上の情報を知って、まず困惑しました。まさかこんなに麻の種類があると意識をしたことすらなかったのです。というわけで、現代における「麻繊維」の一般的な名称を表にしました。
「麻」と書いてあれば何でもかんでも「リネン」と呼んでいました。間違いだった。
リネンとは
衣類の材料として多く流通している「リネン」は、亜麻から作られた繊維で、その種子は「亜麻仁」で健康にいいと注目されるようになった「亜麻仁油」の原材料です。
そんなリネンは、古代エジプトではミイラを包む生地にも使われており、世界最古の繊維で、現在も衣類やカーテンなどいろいろなものに使用されています。
家庭用品品質表示法による「麻」の意味するもの
日本で販売されている衣類の素材には「麻」と表示されています。私の持っているスカートにも「麻」と表示されていました。しかしそのスカートがどの「麻繊維」なのかは定かではありません。
というのも「家庭用品品質表示法」によると「麻」と表示できるのは「リネン(亜麻)」か「ラミー(苧麻)」だけで、それ以外は「植物繊維」と記載されることになっているからです。
「大麻」から採った繊維「ヘンプ」もありますが、「麻」とは表記できません。理由は、「家庭用品品質表示法」で「繊維製品 麻(亜麻及び苧麻に限る。)」と規定されているからです。もし表示するなら「ヘンプ(植物繊維)」とされます。
「リネン」「ラミー」「ヘンプ」と記載されていてもその感触で判別できない人にはあまり意味のない表示でしょうが、「ヘンプ」も麻なのに「麻」と表記できないことから、歪な法制度になっていることが伺えます。
なぜ「麻」と表記できないのか?それは後述します。
メリットとデメリット
さて、麻の種類の豊富さ、原材料になった麻の種類によって生地の名前も色々あるとわかったところで、そのメリットやデメリットについて触れます。
メリット
麻は「吸湿」「吸水性」に優れた繊維で、綿の4倍、絹の10倍の吸水性があると言われています。そしてコロナ禍の時代にふさわしい「抗菌性」もあり、細菌の発育や繁殖を阻止する特性があり、カビも生えにくいそうです。
他に洗濯後もすぐに乾くという「速乾性」に優れている点や、生地がとても丈夫で長持ちする上、汚れにくいという特性もあります。そして個人的に驚いたのは「防臭性」です。麻には「ペクチン」という成分が含まれて居るため、臭いを弾いてくれるそうで、毎日使うシーツなどにぴったりの素材です。加齢臭対策としてもよさそう。
デメリット
いいとこばかりの「麻」だと思いましたが、生地を作る元になる麻繊維には「ネップ」と呼ばれる節ができやすいことや「縮む」ことがデメリットです。特に高い温度で洗うと顕著に縮むのでお水で素早く洗うことが肝要です。
最大のデメリットは「シワ」です。シワだらけのシーツは嫌だな・・・と思いましたが、干すときにしっかり叩いて伸ばせば少しはマシだそうです。もちろん、アイロンをかけたら問題解決です。でも私はかけない。面倒くさい。
「大麻」をめぐる日本とGHQの戦い
「大麻」という植物をざっと勉強して驚いたのは、日本の歴史や文化に触れるとき「大麻」無しには語れないという事実です。
日本は縄文時代より「大麻」を栽培して繊維を作り、共に生きてきました。品種は違えど、世界中にある植物で世界中で使われてきた最古の繊維なのですから、世界中の国々もまた、自国の歴史や文化と深い関わりがあります。
しかしそんな「大麻」なのに、日本での栽培は制限されており、現在は栃木県のみが栽培をしています。原因は、第二次世界大戦後、GHQが日本に出した「大麻」の絶滅命令です。日本とアメリカの間では「大麻」をめぐる静かな戦いがあったのです。
これは広く知られるべきことですし、その状況を変えていくべきだと考えたので、概要を簡単に取り上げます。
「日本産大麻」に麻薬成分はほぼなかった
「大麻」と聞くと即「麻薬」と考える人がおり、私もそうでした。実際、精神を高揚させる成分のある「大麻」は存在します。しかし全ての「大麻」にそういう成分がたくさん含まれているわけではありません。
というのも、日本産の「大麻」は、その麻薬成分「テトラヒドロカンナビノール(THC)」がほとんど含まれておらず(0ではない)、長年にわたり、衣類や紙などの原材料として日本中で栽培されてきた植物でした。
日本と「大麻」の深い関係
古代より「大麻」を栽培して繊維を採り、それらで衣類や紙、縄など様々な品物を作っており、戦国時代に「木綿」が登場するまでは、日本で「布」といえば、麻だったのです。
それほど長い歴史を持つ「麻」ですから、宗教との密接な関係もあります。経典も開祖もいない、森羅万象に神が宿ると考える「神道」においては、「麻」で作られた「麻布(まふ)」は祭祀道具として使われており、「麻」は神聖なものと考えられていたのです。
神社の神主が紙垂(しで)という白い紙や布を付けた白木の棒で参拝者の頭を「バサバサ」と「祓っている」光景を見たことがあると思います。その時に使っているものが「大幣(おおぬさ)」で、使われている生地は「麻布(まふ)」が殆どでした。(最近は紙製のものもあり)
魔除けの力があるとされている「麻」は、神社だけでなく、仏閣や寺でも利用されており、日本人は「大麻」と共に歩んできたと言っても過言ではありません。
「日本産大麻」を守るための「大麻取締法」
第二次世界大戦後、GHQは日本に「麻薬」を禁じる法律を作らせる際、「大麻」も禁止せよと、種子もろとも絶滅させようとします。しかし先述したように日本における「大麻」栽培は、米栽培に次ぐ、重要な農業であり、従事者も多かったため、到底受け入れられることではありません。
GHQの命令は、言わば日本の歴史、習慣や文化を破壊するに等しいことですから、日本政府は強く抵抗し、あくまでも「麻繊維」のための栽培であることや「日本産大麻」には「THC」が殆ど含まれていないことなどを強く訴えた末、栽培面積を決め、栽培も許可制にする「大麻取締法」が制定、施行されるに至ったのです。
思えば、単なる「麻薬」扱いなら「麻薬取締法」でひとくくりにできます。しかしそうではないから「大麻取締法」を作ったのです。
栃木県だけが大麻を栽培
先に触れましたが、現在は栃木県のみが大麻を扱う免許を持ち、「テトラヒドロカンナビノール(THC)」を含まない「日本産大麻」を栽培しています。しかし当然一県だけですから栽培量が少なく、国産の「麻」の価格は高騰するばかりで、非常に残念です。
レジ袋を廃止して世の中を混乱させることより、「日本産大麻」の栽培を増やし、土に帰る天然素材である麻の袋を大量生産した方がよほどいいのではないかと私は考えます。古来より当たり前に使っていた素材なのだから、復活させて欲しい。
医療大麻を使えない日本
さて「大麻取締法」が「日本産大麻」を栽培し続けるために作られた法律だったとわかりました。しかしながら、「大麻取締法」はもう一つ大きな問題を抱えています。
諸外国では、終末期の患者に緩和ケア医療として「医療大麻」が使用されています。しかし日本では許されていません。
それは「大麻取締法」の「第四条 何人も次に掲げる行為をしてはならない。」の定める禁止行為として「第二項 大麻から製造された医薬品を施用し、又は施用のため交付すること。」と「第三項 大麻から製造された医薬品の施用を受けること。」という規定が記載されているからです。
「医薬品を施用し、交付する」ことも「医薬品の施用を受ける」こともダメだなんて理解不能です。はっきり「医薬品」と記載してあるのに・・・。
しかしアメリカの海外ドラマでは「医療大麻」が抗がん剤による副作用を緩和するために用いられたり、末期ガンの痛み止め、痛みの強い症状の緩和のために処方されているシーンを割とよく見ます。どうして日本に「大麻」を禁じたアメリカが使っているのに日本が使えないのか?納得できません。
「医療大麻」の効果がどんなに良いものなのかはわかりませんが、現在の日本では痛みを訴える患者を助けるためであっても使えない。試すこともできない。これは大きな問題です。「医療大麻」は用いられるべき「医薬品」だと思います。というか、もし私がガンの痛みに苦しむことがあれば、「医療大麻」を使えたらときっと考えるに違いない。
しかし現在の世界では「大麻」が解禁されはじめ、状況が変化しています。アメリカで「テンカン」の治療薬として大麻由来の「エピディオレックス」が承認されたことが、日本の国会でも取り上げられ、「聖マリアンナ医大」が治験を行うことを決断し、安全性が確認されれば薬として使用できる可能性が出てきました。この流れを受けて、近い将来、日本でも「医療大麻」が解禁されることになるかもしれません。
高齢化している日本は、間違いなくガン患者も増えるでしょう。時間の猶予はありません。「医療大麻」は早く解禁され、患者のために用いられるべきだと強く願います。
日本製リネン100%のシーツ
前置きが長くなりましたが、今回注文した「日本製」のリネンシーツと枕カバーです。ただし原材料?はヨーロッパのリネン。なので純日本製ではありません。でも日本で縫製された製品なので日本製です。
袋越しでの印象は「しっかりした生地」でした。
ベッドなのでボックスシーツにしようかと思ったのですが、私はエアウィーブを愛用しており、ボックスシーツは使いづらいため、今回はフラットシーツにしました。
日本製のタグ。そしてこのシーツは国際規格の「エコテックス100」を取得しており、赤ちゃんも安心して使える素材です。
こちらは枕カバーのタグ。
生地のアップ。これは洗濯前。綺麗ですね。松並木のコットンと比べると生地は固い。って当たり前ですが。
洗濯後のシーツ。やはりシワがたくさんできちゃいました。アップにすると顕著です。
しかしベッドメイキングしてみると、シワは確かにありますが「味」だと思えるレベルだと思いました。
使ってみた感想
まず肌触りですがひんやりさらっとした感じでした。そして肌離れというか、夏の朝起きたときのじっとり感がなく快適でした。松並木のやわらかなガーゼシーツも良いのですが、コットンはじっとり肌に吸い付いてくる感じなので、夏はリネンのほうがいいと感じました。
夏の朝は、シーツも汗で重くなっている感じがしますが、このシーツはそんな感じがしません。さらっとしています。こりゃいい。かなり気に入りました。
でもケットは松並木のガーゼケット。冷房で冷えすぎないようにするにはほんのりやわらかで暖かいコットンのガーゼケットは最適でしょう。
愛用の巨大な抱き枕「コンフォートU」に体と頭、腕もゆったり預けて、松並木のガーゼケットをかぶり、海外ドラマを見るのが至福の時間になりました。
というわけで、夏のシーツはリネン、肌掛けは松並木のガーゼケットで行きます。良ければおためしあれ。
ボックスシーツもあります。こちらはシングルベッド用3セット。
最後にひとこと
麻とリネンの違いを知るだけでなく、日本の「大麻」に関する歴史、文化の深さ、実用性の高さを知ることができてよかった。