ペルーで「ギランバレー症候群」が集団発症しており、死亡者が出ています。事態を重く見たペルー政府は非常事態宣言を出しました。日本ではカンピロバクター食中毒をきっかけに「ギラン・バレー症候群」を発症する事例もあるので取り上げます。
ペルーで「ギランバレー症候群」患者の集団発生
まずはソースをどうぞ。
ペルーで「ギラン・バレー症候群」が集団発生 旅行者も注意を
南米のペルー政府は、手足に力が入らなくなる難病の「ギラン・バレー症候群」が首都リマや北部の観光地などで、集団発生していることを受けて健康上の非常事態の宣言を出しました。現地の日本大使館も、旅行者などに衛生対策を徹底するよう注意を呼びかけています。
ペルー政府によりますと、首都リマや北部の観光地では、ことしに入り、ギラン・バレー症候群が206例確認され、このうち4人が死亡しています。
ギラン・バレー症候群は年間の発症率が10万人に1人と言われる難病で、発症すると手足に力が入らなくなり、まひが全身に急速に広がって、最悪の場合、死に至ることもあります。
ペルー政府は、患者の広がりを受けて今月8日に、健康上の非常事態の宣言を出し、筋力の低下などの症状が出た場合には、すぐに病院で診察を受けるよう呼びかけています。
また、蚊が媒介するジカ熱との関連も指摘されていることから専門の医師を現地に派遣して原因の調査を行っています。
ペルーには世界遺産のマチュピチュなどに多くの日本人観光客が訪れていて、現地の日本大使館は、トイレの後の手洗いや食べ物をきれいに洗うなど衛生対策を徹底するよう注意を呼びかけています。
NHK:
エラー|NHK NEWS WEB
10万人に1人発症といわれる難病の「ギランバレー症候群」が集団発生するのは驚きです。
ギラン・バレー症候群とは
「ギランバレー症候群」とは、風邪や下痢症状を起こしたあと、手足がしびれたり、力が入らなったりするなどの神経障害を起こす病で、フランスの神経学者「ギラン(G.Gullain)とバレー(J.A.Brre)」の2人が、1916年に記載した「多発性神経炎」です。
無熱筋痛、運動減弱、腱反射消失などの症状があり、脳脊髄液中のタンパク質成分が増加しているのに、細胞数が増加しないのが特徴。脳神経も侵されることがある。上気道感染やワクチン接種後などに続いて、急に神経症状が現れて、約4週間後には軽快するという経過をたどることが多い。免疫性疾患の一つとされています。
ブリタニカ国際大百科事典より
症状と治療
初期症状は、脱力感やヒリヒリとした感覚などで、悪化すると下肢などがしびれるなどの神経症状が起こります。このうち何人かが胸部などの麻痺になり、呼吸困難などの症状に陥ったり、顔面麻痺などを起こして、会話が困難になることもあります。
患者の3%から5%は、重篤な症状として「肺塞栓」などを起こすなどの合併症で命を落とすこともあり、「ギラン・バレー症候群」と診断された場合は、しっかりと治療を受けることが肝要です。
ギラン・バレー症候群について(ジカウイルス感染症の関連を含む)[ファクトシート更新3]
前略
通常、症状は数週間続き、ほとんどの人は長期化することも、重度の神経学的合併症も起すことなく回復します。次のような経過を示します。
●ギラン・バレー症候群の初発症状は、脱力感やヒリヒリ感です。通常、下肢から始まり、上肢や顔面に広がることがあります。
●このうち何人かの患者では、これらの症状に続き、下肢、上肢、顔面の筋肉が麻痺してきます。患者の20~30%で、胸部の筋肉が麻痺して、呼吸が困難になります。
●重症のギラン・バレー症候群患者は、会話や嚥下機能に影響が出ることもあります。このような患者には生命の危険があり、感染者には集中治療室での治療が必要となります。
●脱力感が続く患者もいますが、かなり重症のギラン・バレー症候群でもほとんどの患者は完全に(症状が)回復します。
●設備が整っている環境でも、ギラン・バレー症候群患者の3-5%が合併症で死に至ります。呼吸筋の麻痺、血液感染、肺塞栓、心停止などを起こします。後略
厚生労働省検疫所FORTHより(2016年10月)
ギラン・バレー症候群について(ジカウイルス感染症の関連を含む)[ファクトシート更新3]厚生労働省検疫所「FORTH」、海外で健康に過ごすために。
原因
原因は不明で、感染症やワクチン接種をきっかけに起こると言われています。最近は「カンピロバクター」に感染した人のうちに10万人に1人程度、「ギランバレー症候群」になる人が発見されており、「ギランバレー症候群」の原因の一つだと言われています。
ギランバレー症候群とは急速に腕や脚の筋力が低下し歩行障害などを引き起こす病気で、昨年6月には俳優の安岡力也さんが、同3月には川口順子元外相もかかっているそうです。このギランバレー症候群のはっきりとした原因は不明だそうですが、この病気に先立って、サイトメガロウイルス等のウイルスやカンピロバクター等の細菌の感染が認められている報告があるそうです。
食環境衛生研究所
カンピロバクターとギランバレー症候群より
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2016年にブラジルで行われたリオオリンピックの際、蚊を媒介してジカウイルスに感染する「ジカ熱」は、妊婦が感染すると生まれてくる子供が「小頭症」になるということで騒ぎになりましたが、ギランバレー症候群を引き起こすとも言われており、今回のペルーでの流行は、ジカウイルスによるものではないかと推測されている状況です。
何が危ない?どう防ぐ?
ジカウイルス感染症(ジカ熱)予防のポイント前略
ギラン・バレー症候群
ギラン・バレー症候群は、手や足の力が入らなくなり、しびれ感が出た後、症状が全身に広がる病気です。比較的急速に進行することが特色で、発症後1日~2週間で筋力低下が全身に及びます。重症の場合は、声が出にくい、食べ物が飲み込みにくい、呼吸が苦しいといった症状を起こし、時には人工呼吸器が必要になることもあります。症状が軽い場合は自然に回復することもありますが、多くの場合は入院治療が必要になります。
原因は不明ですが、一般に感染症や医薬品の副作用の影響が疑われています。ジカウイルス感染症の流行地域でのギラン・バレー症候群の患者が増えており、WHOはジカウイルス感染によりギラン・バレー症候群が発症することがあるとしています。後略
政府広報オンラインより(平成29年(2017年)6月29日)
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201605/2.html
カンピロバクター食中毒
ギラン・バレー症候群の原因の一つとされている「カンピロバクター」とは、ウシやトリ、ブタなどの家畜類の腸内に生息する細菌です。下痢や腹痛などを起こす原因菌の一つで、食中毒の3割が「カンピロバクター」によるものと言われています。
症状と治療
潜伏期間は3日前後で、発熱や腹痛、下痢や嘔吐、頭痛などの症状がおこります。腹痛はかなり強く、血の混じる下痢になることもあります。
感染患者の多くは自然治癒するため、特別な治療せずに対症療法を行うことが殆どです。下痢と発熱で脱水症状が起こることが多いので、スポーツドリンクなどでの水分摂取に努め、細菌の対外排出を促します。
ただし稀に重症化することがあり、その際には消化剤や整腸剤、マクロライド系の抗菌薬を用いる薬物療法を行うこともあります。
予後
一般的に免疫力が低下している人でないかぎりは、後遺症もなく治癒します。しかし最近、カンピロバクター食中毒を起こして1週間から3週間程度してから「ギランバレー症候群」になることが報告されています。
ただ「ギランバレー症候群」を発症するのは10万人に1、2人程度として、かなり低い確率です。日本では、1999年に起こった「カンピロバクター食中毒」の集団発生19名のうち1名が「ギランバレー症候群」になったことが貴重な事例として報告されています。
前略
合併症
C. jejuni 感染症の一般的な予後は、一部の免疫不全患者を除いて死亡例も無く、良好な経過をとる。しかし、近年本菌感染後1〜3週間(中位数:10日間)を経てギラ ン・バレー症候群 (GBS)を発症する事例が知られてきた。GBSはフィッシャー症候群など複数の亜型があるが、基本的には急性に四肢脱力を主徴とする、運動神経障害優位 の自己免疫性末梢神経障害である。GBS患者の約30%では、GBS発症前1ヵ月以内に本菌感染症の罹患が認められており、その発症メカニズムの主因とし て、菌体表層の糖鎖構造と運動神経軸索に豊富に分布するガングリオシドとの分子相同性が指摘されている。GBSはこれまで予後良好な自己免疫疾患として捉 えられていたが、C. jejuni 感染症に後発するGBSは軸索型GBS(AMAN:acute motor axonal neuropathy)で重症化し易く、英国のデータでは発症1年後の時点においても、4割程度の患者に歩行困難などの種々の後遺症が残ると言われてい る。また、一部患者では呼吸筋麻痺が進行し、死亡例も確認されている。GBSの罹患率は諸外国でのデータでは、人口10万人当たり1〜2人とされている。 我が国での発生状況については報告システムがなく、実数は不明であるが、年間2,000人前後の患者発生があるものと推定されている。
C. jejuni 感染症に後発するGBSは、これまで散発例として確認されてきた。しかし、1999年12月東京都において、C. jejuni 集団食中毒患者19名中、1名のGBS患者の発生が確認されたが、 これは諸外国でもほとんど例がない。この事例は、GBS発症にC. jejuni 感染症と患者の免疫学的背景とが関与していることを立証した、極めて貴重なものであった。
後略
NIID 国立感染症研究所「カンピロバクター感染症とは」より
カンピロバクター感染症とは
最近の事例としては、2018年に牛のレバ刺しを食べて「カンピロバクター食中毒」を起こした人が「ギランバレー症候群」と診断されたという報道がありました。ソースはこちら。
レバ刺し食べた2人が食中毒、1人は重体 茨城の飲食店
茨城県は6日、古河市内の飲食店で牛レバ刺しなどを食べた2人が食中毒症状を訴えた、と発表した。2人の便からは食中毒の原因菌カンピロバクターが検出された。うち1人は体のまひや呼吸困難が起き、重体で入院している。
県生活衛生課によると、11月2日夜、古河市の飲食店「はたがやレバー古河店」を会社の忘年会で利用した男性18人が、牛のレバ刺しやハツ刺しなどのコース料理を食べた。うち50代の2人が6日から食中毒の症状を訴えたという。
入院中の男性は体のまひや呼吸困難を引き起こし、最悪の場合は死に至る「ギラン・バレー症候群」と診断された。カンピロバクターを攻撃する免疫反応の影響で発症したとみられる。
後略
朝日新聞:
https://www.asahi.com/articles/ASLD667BSLD6UJHB00X.html
感染経路
主に鶏の生肉やレバーなどの火を通さない料理での感染が多いものの、それ以外に、湧水や感染者の糞便経由でヒトーヒト感染もあります。しかも猫や犬なども無症状で保菌していることがあり、日常生活でも気をつける必要があります。
予防と対策
カンピロバクターは100個程度でも食中毒を起こす細菌です。料理の際には肉をよく加熱し、細菌が他の食品に付着しないようにまな板や包丁などの調理器具はマメに洗浄しましょう。
取り上げられたテレビ番組
2018年10月9日に放送された「ザ!世界仰天ニュース(日テレ)」でカバンの中に入れっぱなしになっていた「たまごサンド」を食べて「カンピロバクター食中毒」になり、後に「ギランバレー症候群」を発症した女性が取り上げられていました。
カンピロバクターによる食中毒は鶏の生肉を食べて発症する事が多いが、
彼女には心当たりがなかった。しかし食中毒といえば思い当たる節があった。
それはコーヒー牛乳が炭酸に感じた日のさらに1週間程前の事…
彼女は近所のパン屋でタマゴサンドを買った。柚子華さんは、そのタマゴサンドをすぐには食べなかった。
この日の最高気温は32.7度。
柚子華さんはタマゴサンドをカバンに入れたままにしてしまった。その翌日、消費期限は前日までだったが、「まあ大丈夫だろう」と思い、
そのタマゴサンドを食べてしまった。
この食中毒が原因で、
柚子華さんはギラン・バレー症候群を発症してしまったとほぼ断定された。2018年10月9日に放送「ザ!世界仰天ニュース」より
まさかの食べ物で大病になった女性|ザ!世界仰天ニュース日常に潜む危険。軽い気持ちで食べたある物で 思わぬ病気を発症させてしまう事がある。 東京都に住む、坂柚子華(ゆずか)さんはこの夏、そんな体験をした。 柚子華さんは結婚2年目。幸せに暮らしていた。 ところが3か月前のこと...柚子華さんが突然
最後にひとこと
カンピロバクター食中毒が増えるのは5月、6月です。しかしカンピロバクター以外にも食中毒が増える時期ですから、よく加熱し、マメな手洗い、調理器具の洗浄を徹底し、食中毒に気をつけましょう。