百十四銀行の元行員が、顧客の預金情報を漏洩させたとして逮捕されました。漏洩した預金情報は、同じく百十四銀行の元行員に渡されたとみられており、二人は2012年入行の同期。酷いなと思って銀行の不祥事を調べてみたら、出るわ出るわ状態だったので取り上げます。
百十四銀行の元行員、預金情報を漏洩
まずはソースをどうぞ。
百十四銀行 顧客情報漏えい 詐欺事件の犯人に渡った可能性も
高松市に本店がある百十四銀行の30代の行員が顧客の預金残高などの情報を知人に漏らしていた問題で、この知人は、同じ銀行の元行員で、元行員側から漏えいを働きかけていた疑いのあることが関係者への取材でわかりました。
百十四銀行では、支店に勤めていた30代前半の男性行員が、去年11月からことし8月にかけて、知人の30代の男性に顧客の企業3社と個人14人の預金残高や口座番号などの情報を漏らしていたとして、先月28日付けで懲戒解雇されました。
情報を受け取っていたとされる知人について、銀行は詳しいことを明らかにしていませんが、この知人は、同じ銀行にかつて勤めていた元行員で、元行員側から漏えいを働きかけていた疑いのあることが関係者への取材でわかりました。
銀行は、情報を漏らされた顧客の1人が詐欺の被害にあったことから、情報が詐欺事件の犯人に渡った可能性が高いとしていて、銀行の情報管理の体制が厳しく問われそうです。NHK NEWS WEB: 2019年11月1日 8時03分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191101/k10012159701000.html
情報を受け取った人物も百十四銀行の元行員でした。ソース。
情報漏えい先は同期入行組
百十四銀行(高松市)の元行員が友人に顧客の氏名や預金残高を漏らしていた問題で、友人も百十四銀の元行員だったことが1日、分かった。関係者によると、2人は2012年4月入行の同期。一緒に行員教育を受けた者同士が結託し、モラルを欠いた行動を取っていた。同行の管理体制が厳しく問われそうだ。
情報提供を受けた元行員は、約1年前に退職したという。百十四銀は10月31日に開いた記者会見で、東大阪支店(大阪府東大阪市)の元行員が情報を漏らした相手を「友人で、頻繁に食事する仲だった」と説明するにとどめていた。
預金残高などの情報は犯罪グループに渡った可能性が高い。徳島銀行:11/1 17:23
https://www.topics.or.jp/articles/-/278507
2012年4月に入行した同期で犯罪に手を染めていました。銀行がこんなことでは預ける人はどうしたらいいのか。
銀行員の不祥事が増加
今回の事件を調べるために、銀行員の預金情報漏洩で検索してみたら驚くほどたくさんの事件が出てきました。その多さを実感してもらうために、現在記事を書いている2019年に報道された銀行員(ゆうちょ、農協等含む)による情報漏洩や預金横領、着服事件をピックアップします。
池田泉州銀行の行員 2億円余りを着服 大阪
大阪市に本店がある池田泉州銀行は、銀行員が顧客に投資信託を購入するなどとうそを言って預金を不正に引き出し、およそ12年間で2億円余りを着服していたことを明らかにしました。
後略
NHK NEWS WEB:2019年10月11日 21時30分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191011/k10012124091000.html
郵便局幹部が切手換金5億円着服
東京都の神田郵便局(千代田区)と芝郵便局(港区)の幹部がそれぞれ「料金別納」制度の支払いに使われた大量の切手を着服し、金券ショップで計約5億4千万円に換金していたことが31日、分かった。2014年度から16年度にかけ、神田郵便局で4億円、芝郵便局でも1億4千万円に上る。日本郵便は全額を返還させ18年度に2人を懲戒解雇したが、公表していなかった。
後略
西日本新聞 2019/10/31 11:54 (2019/10/31 12:35 更新)
https://www.nishinippon.co.jp/item/o/555583/
行員が3300万円着服=刑事告訴へ-広島銀行
広島銀行(広島市)は1日、甲山支店(広島県世羅町)に勤務していた男性行員(26)が顧客の口座から計3337万円を着服していたと発表した。行員はギャンブルや借金返済に充てており、同行は9月30日付で懲戒解雇した。近く刑事告訴する方針。
時事通信:2019年10月01日17時05分
https://www.jiji.com/jc/article?k=2019100100933&g=soc
男性職員524万円横領 新岩手農協
新岩手農協(本所滝沢市、小野寺敬作組合長、正組合員1万9802人)は20日、同農協の男性職員(42)が事務局を担当している県央へい獣処理協議会の銀行口座などから計524万円を横領したと発表した。職員は「パチンコに使った」と私的流用を認めているという。
後略
岩手日報:2019.09.21
https://www.iwate-np.co.jp/article/2019/9/21/64870
1千万円横領疑い 経理担当の女逮捕 市原
市原署は12日、業務上横領の疑いで自称市原市泉台5、派遣社員、時田淳望容疑者(51)を逮捕した。
逮捕容疑は同市内の部品販売会社の経理担当だった2016年1月5日~3月31日、14回にわたり同社名義の預金口座から自分の銀行口座に計約1008万円を振り込み、横領した疑い。後略
千葉日報:2019年9月13日 05:00
https://www.chibanippo.co.jp/news/national/626849
東邦銀の元行員2644万円を着服 懲戒解雇、刑事告訴へ
東邦銀行は26日、宇都宮支店(宇都宮市)の男性元行員(29)が現金約2644万円を着服していたと発表した。近く刑事告訴する方針。後略
河北新報:2019年08月27日火曜日
https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201908/20190827_63023.html
きらぼし銀、行員が800万円着服
きらぼし銀行は7日、元行員が顧客の現金を約800万円着服していたと発表した。32歳の男性行員が、2014年から17年にかけて多摩支店(多摩市)の顧客から運用商品の購入資金として預かった現金をだましとっていた。同行は6日付で同行員を懲戒解雇した。後略
日本経済新聞:2019/6/7 20:57
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45833980X00C19A6EA4000/
都留信組、元支店長が約2億円着服
都留信用組合(山梨県富士吉田市)は29日、元支店長の男性職員(52)=総務部付に異動=が顧客の預金など約2億円を着服していたと発表した。4月4日に顧客からの定期預金の解約申し出があり発覚した。同信組は元支店長を懲戒解雇し、刑事告訴する方針という。被害者には信組が全額弁済するとしている。後略
日本経済新聞:2019/5/29 21:36
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45423110Z20C19A5L83000/
筑波銀の行員、着服で解雇 ソーシャルゲームで借金「利用料金支払いのために」
筑波銀行(茨城県土浦市)は27日、顧客1人から集金した現金計95万円を着服し自身の借金返済などに充てたとして、男性行員(32)を懲戒解雇処分にした。後略
サンスポ:2019.5.27 17:30
https://www.sanspo.com/geino/news/20190527/tro19052717300002-n1.html
顧客預金150万詐取疑い 山形銀の元行員逮捕
山形県警天童署は27日、顧客から現金150万円を詐取したとして、詐欺の疑いで、元山形銀行員、太田孝広容疑者(56)を逮捕したと発表した。同署によれば、太田容疑者は「借金の返済のためにやった」と容疑を認めているという。後略
産経新聞:2019.5.27 15:06
https://www.sankei.com/affairs/news/190527/afr1905270010-n1.html
三菱UFJ信託銀の行員逮捕=顧客預金950万円詐取容疑-広島県警
顧客の預金口座から955万円を不正に引き出したとして、広島県警捜査2課などは23日までに、詐欺容疑で三菱UFJ信託銀行の行員辻ノ内正芳容疑者(40)=奈良市西九条町=を逮捕した。「勝手に出金していない。客から承諾を得た」と容疑を否認している。後略
時事ドットコムニュース:2019年05月23日12時22分
https://www.jiji.com/jc/article?k=2019052300615&g=soc
京葉銀行員が2億円超着服 定年再雇用の60代男性告訴へ
京葉銀行(千葉市)は22日、定年後に再雇用した60代の男性行員が2001年1月〜18年11月、口座振替の事務手数料計約2億4900万円を着服していたと発表した。12月26日付で懲戒解雇処分としており、千葉県警に業務上横領などの疑いで告訴する方針。
後略
福井新聞:2019年2月22日 午後8時19分
https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/802247
ネット上で拾えたものだけでこれだけありました。100万円以下のものもありますが、億単位のものが多く、銀行って本当に大丈夫なのか?感じます。
不正が相次ぐ金融機関
私が元行員などによる金融関係者の不正の増加について、2018年の年末に日本経済新聞が電子版の記事で取り上げていました。ソースはこちら。
地銀の不正が相次いだ18年、不正融資や現金着服など約30件
2018年は地方銀行を中心に金融機関の不祥事が目立った。北から南まで全国の地銀で発覚した事件は約30件。特に多かったのが現金の着服や流用といった、信用商売の銀行員にあるまじき金銭に絡んだ事件で逮捕者も出た。人員削減などコストの見直しを背景に不正行為への抑止が効きにくくなっている可能性がある。信用が生命線である銀行にとって経営を揺さぶりかねない由々しき問題といえる。
都内を中心に業務展開するきらぼ…
以下会員限定
日本経済新聞:2018/12/30 2:00
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39578140Z21C18A2000000/
2018年に発覚している金融機関の不祥事が約30件。私が検索で見つけた2019年の不祥事は13件。私が未発見の不祥事もあるでしょうが、2018年よりは少なそう。
しかし銀行、金融業は「信用業」であり、着服、横領、預金情報の漏洩はあってはならない事件です。にもかかわらず、当該の銀行の頭取が責任をとって辞任したなどという記憶がありません。
そこで銀行の頭取が辞任した事例を探してみたら、最近では2014年のみずほ銀行の頭取が暴力団員への融資を放置した責任を取る形での辞任がありました。ソースはこちら。
みずほ銀佐藤氏、頭取辞任「社会を騒がせたけじめ」 会見で説明
みずほフィナンシャルグループは23日、傘下のみずほ銀行の佐藤康博頭取(61)が4月1日付で退任し、林信秀副頭取(56)が昇格すると発表した。佐藤氏はみずほ銀で代表権のない取締役になる一方、みずほFGでは社長を続投する。
佐藤氏は23日午後の記者会見で頭取辞任の理由について「社会を騒がせたことに対する私の思い、けじめだ」と述べた。そのうえで、「4月1日以降はグループ最高経営責任者(CEO)としての役割に特化し、頭取については林氏に委ねることにした」と語った。
みずほ銀は提携先の信販会社オリエントコーポレーション(8585)を通じて暴力団員らへの融資を放置していた問題を巡り、金融庁から2度にわたる行政処分を受けた。17日には金融庁に2度目の業務改善計画を提出し、佐藤氏は同日の記者会見で頭取を続ける考えを示していた。後略
日本経済新聞社: 2014/1/23付
https://www.nikkei.com/article/DGXNASFL230P1_T20C14A1000000/
暴力団員への融資を放置していたのだから辞任もやむなしですね。結局、顧客のお金に手をつけて辞任などは見つけられませんでした。ちょっと甘いのではないでしょうか。
ちなみに2017年に東京三菱UFJ銀行の頭取小山田隆氏がわずか1年で辞任していましたが、これは「銀行業界の闇」由来なので不祥事ではありません。この件を簡潔に説明すると「歴代の頭取5名(全て三菱銀行系)と前頭取が、歴代頭取が牛耳る状況を改革しようとした金融庁側との板挟みで辞任に至った」といったところ。
週刊誌報道によると、90にもなる歴代頭取を含むOB5名が未だに個室と秘書、役員報酬も貰って、経営にも口を出して支配する銀行、それが三菱UFJ銀行だとか。こういうことは私は全く知らないことでドン引きしました。銀行の頭取界隈の話は、庶民には知りえない恐ろしい世界のようです。
ソースが週刊誌なので鵜呑みにはできませんが、OBが未だに牛耳っていることは事実で間違いないでしょう。おそろしや。興味のある人はこちらの記事をどうぞ。
金融関係者の犯罪は厳罰化すべき
頭取が責任を取らないのなら、実行した行員への処罰を厳格化する必要があるでしょう。特に今回銀行の不祥事について調べようと思ったきっかけである「百十四銀行」の行員による預金情報の漏洩は、深刻だからです。
預金情報が犯罪者の手に渡れば、その顧客が「オレオレ詐欺」のターゲットにされたり、自宅への強盗の危険性が増します。ですか今回情報漏洩の被害に遭った百十四銀行の顧客は詐欺や強盗への警戒を強める必要があります。実際、百十四銀行では情報漏洩被害を受けた顧客が既に詐欺被害にあっています。これは由々しき事態です。
預金情報などの漏洩は、私を含めて「銀行に預けているから大丈夫」と思っている人には酷い裏切りです。だからこそ、実行犯への罰はもちろんのこと、その会社のトップへの責任追及も必要ではないでしょうか。
行員の待遇改善を
銀行員すべてが悪いわけではありません。詐欺事件から助けてくれる素晴らしい人もいます。ソースはこちら。
ローマ字の振込先や会話に不審点 播州信金職員「国際ロマンス詐欺」被害防ぐ
外国の軍人を装い恋愛感情を抱かせて現金をだまし取る「国際ロマンス詐欺」の被害を未然に防いだとして、兵庫県警たつの署は13日、播州信用金庫龍野支店(たつの市龍野町堂本)に署長感謝状を贈った。
https://www.kobe-np.co.jp/news/seiban/201903/0012144230.shtml
同署によると、2月8日に現金振り込みに来店した40代の女性に対し、職員が目的を尋ねたところ、ローマ字で書かれた振込先や「結婚する男性からの荷物を受け取るのに保証金を振り込む」といったやりとりから詐欺の疑いがあると判断。警察に通報した。
声掛けをした職員の萩原唯子さん(25)は「振り込み内容の確認はお客さまにとって大事だと改めて分かった」。鳴瀧誠二支店長(42)は「普段からの気配りが被害の未然防止につながったと思う」と話した。(松本茂祥)
2019/3/13 21:00神戸新聞NEXT
最近被害者が出るようになっている「国際ロマンス詐欺」を防いでくれたのは若い女性行員でした。こういう人がいるからこそ、悪い行員を処罰し、良い行員のお給料を増やすなど労働環境を良くしてあげてほしい。あるいは、そういう事件を未然に増やしたら「お手柄手当」的なものをあげるなどしてはどうでしょうか。
そういうことがきっと悪い行員を増やさない、出さないことにも繋がるはず。
最後にひとこと
「ながら運転」も道交法の改正により厳罰化されます。金融犯罪も厳罰化すべきでしょう。