福島県の水産加工会社「伴助(ばんすけ)」がサンマの産地偽装を行っていました。韓国産や中国産が含まれていたということで取り上げておきます。
中国産、韓国産のサンマを北海道産サンマに偽装
まずはソースをどうぞ。
韓国産などのサンマ加工品を「北海道産」と虚偽表示 農水省が福島の会社に是正指示
韓国産などのサンマを「北海道産」と偽ったとして、農林水産省は福島県いわき市泉町の水産加工会社「伴助(ばんすけ)」に対し食品表示法に基づき是正を指示したと発表した。
農水省によると、台湾や韓国産、岩手・宮城両県産の冷凍サンマを使った加工品3品を「北海道産」と偽り、少なくとも平成27年11月~今年2月の間に138万3718匹を販売していた。
偽の表示があった加工品は「さんま丸干」「さんま開き」「さんま味醂(みりん)干」で、不正の原因や再発防止策について6月8日までに報告するよう求めた。伴助は調査に「北海道産の在庫が不足し、他産地のものを使った」と説明しているという。
産經新聞: 2018.5.9 17:15更新
https://www.sankei.com/affairs/news/180509/afr1805090012-n1.html
在庫不足になったので、他の産地のサンマを混ぜたそうです。在庫が無くなったら産地を変更すればいいだけでしょうに。
伴助(ばんすけ)
伴助は、創業55年の会社でした。ただしwebバナーにあった記載なので何時の時点で55年かは判りません。会社沿革には住所や代表取締役の名前しかないので確認ができませんでした。
干物で有名な会社で、高級店「銀座伴助」も美味しい干物を提供してくれるお店として人気があるようです。しかし今回、サンマの産地偽装が発覚し、信用はがた落ちですね。
HPに行くとトップページに謝罪文が出ていました。
さんま加工品の不適正表示について
平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
平成30年5月8日に農林水産省から、弊社の「さんま加工品」の産地が不適切だとのご指摘を受けました。
より良い製品づくりを心がけておりましたが、このような事態を招き、お客様に多大なご迷惑をおかけいたしました亊心よりお詫び申し上げます。
尚、銀座伴助ではさんま加工品の販売を行っておりません。
その他の商品については、調査の結果不適正表示の指摘はされませんでした。
行政指導に基づき改善を行い以後二度とこのようなことが起こらないよう、従業員共々最大限の努力をする所存でございます。
今後とも変わらぬご愛顧賜りますようお願い申し上げます。株式会社伴助
代表取締役社長 小野 喜尚株式会社伴助公式ホームページ創業55年以上の熟練職人が作り出す、自社製造の干物。 毎日の食事が楽しくなる干物をお取り寄せ!
サンマ以外での偽装はなく、銀座伴助ではさんまの加工品を販売していなかったということですが、報道では平成27年から続けていた偽装です。「より良い製品づくりを心がけておりました」という謝罪の言葉に説得力はありません。
北海道産ブランドに傷をつけた
北海道産のサンマが無いなら、他府県産の記載に変更すれば良かった。しかし伴助は「北海道」というブランド力を手放したくなかったのでしょう。
しかしこの偽装は、結果として「北海道」ブランドへ傷をつけたわけですから猛省するべきです。「北海道産」と書いてあっても「本当かな?」という疑惑の芽を消費者に埋め込んだのですから。
生鮮魚類の産地の仕組み
偽装は褒められませんが、1つだけ伴助に感謝します。それはこの件をきっかけに「生鮮魚類の産地」について考えるきっかけになったからです。
船の船籍が産地になる「船舶主義」
お店で売られている魚介類には、「北海道産」「静岡県産」「山口県産」などと日本国内の地名が記載されているか、「中国産」「韓国産」「オーストラリア産」などの国名が記載されています。
しかしこの記載に問題があることをまぐろ問屋を営む方のブログにあった記載で気付きました。
日本の遠洋、公海上で漁をするのが基本のマグロの遠洋漁業。
例えば大西洋であったり、インド洋であったり、太平洋と言っても広くてハワイ方面もあったり南米ペルーやオストラリアのシドニー沖の方まで漁に行っている。そういった場所で獲れているまぐろの産地はどうなのでしょうか?
答えは、どんな漁場であっても日本船が獲ったら、『日本産』、中国船が獲ったら『中国産』、韓国船が獲ったら『韓国産』。
たとえ同じ漁場でとなり通しで漁をしてまぐろを獲ったとしても、船籍主義の水産業は『船籍』=『産地』となります。
『中国船』が運搬船に洋上で転載して、日本で水揚げしし一度も中国大陸に行っていないまぐろも『中国産』となる。ましてや『中国船』のオーナーが台湾人だとしてもそれは『中国産』である。後略
「まぐろ問屋の日記」より
冷凍まぐろの産地 : まぐろ問屋の日記日本の遠洋、公海上で漁をするのが基本のマグロの遠洋漁業。例えば大西洋であったり、インド洋であったり、太平洋と言っても広くてハワイ方面もあったり南米ペルーやオストラリアのシドニー沖の方まで漁に行っている。そういった場所で獲れているまぐろの産地はどうなのでし
公海で獲れた魚の原産地を考えた事がなかったので、はっとなりました。
生鮮魚類の産地表示の問題
どこの国のものでもない太平洋や大西洋で魚を獲った場合、その原産地はその「船籍」の国になる。なるほど公海上だとそうなるのは納得でした。そしてこの件をきっかけに獲れた魚の原産地はどういうルールがあるのか調べました。
すると、生鮮食品に関してはガイドラインがあり、「生産水域名(養殖地名)を記載することが原則」で、水域名の記載が難しいときは、例外的に水域名ではなく「水揚げ港名」か「都道府県名」を記載できることになっていました。
生鮮魚介類の生産水域名の表示のガイドライン
(1)現行の生鮮食品品質表示基準では、国産生鮮魚介類の原産地は生産水域名(又は養殖地名)を記載することが原則となっており、水域名の記載が困難な場合は、例外として水域名に代えて水揚げ港名又はその属する都道府県名を記載することができることになっている。
(2)消費者は、食品の安全性や品質の重視から、購入する魚介類がどこの水域で漁獲されたものかという生産水域に関する情報を求めるようになっている。しかし、実際には、生産・流通・販売の各段階において生産水域に関する情報伝達が不十分、水域名をどのように記載すればよいかが必ずしも明確でない、水揚げ港地の記載が最も容易等の事情から、大半の品目で水揚げ港の属する都道府県名が表示されているため、消費者のニーズに十分対応できていないほか、同一水域で漁獲されても水揚げ地によって都道府県名の表示が異なったり、都道府県名が水揚げ港地を示すのか又はその沖合などの生産水域を示すのか、わかりにくいといった指摘がなされている。
(3)このため、生鮮魚介類の生産水域名の表示のガイドラインを策定し、これを指針として、現行の水産物の原産地表示の基準に基づく生産水域名の表示を推進する。
後略
水産庁:生鮮魚介類の生産水域名の表示のガイドラインより
水産庁/生鮮魚介類の生産水域名の表示のガイドライン:水産庁
原則は「水域名」となっています。しかし私の記憶では「地名」が殆どです。北海道産のサンマしかり、下関のフグしかり。これはよろしくない。というか殆ど地名で売られている。名産品だと判りやすいですが、原則では水域名。これは表記の手抜きではないでしょうか。
それに「水域名の記載が困難」とはどういう場所を指すのでしょうか。これがよくわからない。なので農林水産省に問い合わせメールをしました。返事が届き次第追記します。
漁場の記載を徹底を
かなり穿った見方になりますが、ガイドラインの例外規定に則ると宮城県で獲れても、岩手県で水揚げすれば「岩手県産」、静岡県で獲れても大阪府で水揚げすれば「大阪府産」と記載できます。
外国産を国産と偽るほど酷くはないものの、これも「偽装」と言えるでしょう。とは言え、ガイドラインには水揚げした場所で記載できる余地があり、違法ではありません。
原則では「水域の記載」となっているのですから、これを徹底して欲しい。そうすれば消費者もその表記に慣れ、水域記載の無いものを選ばなくなります。そして水域記載が無ければ買わないのが一般的になっていけば、水域記載が常識になっていくでしょう。
農水省は「水域記載」徹底の勧告を今一度出して、消費者のニーズにより答えるお店が増えるように動いて欲しい。
最後にひとこと
我が家では「鳴門わかめ」を買わなくなりました。理由は立て続けて起こった「鳴門わかめ」の偽装で、食べる事をやめてしまったのです。騙されるくらいなら「鳴門わかめ」を選ばずに、普通のわかめでいいと判断したからです。偽装はその食品に対する信頼をも失わせる。それくらい産地偽装は罪深い。裏切り続ければ、食べる事をやめる消費者もいることを業者は知るべきです。
コメント
昨日、近くに新しく出来たスーパーに行きました。
こちらの記事のおかげで伴助の商品を避けることが出来ました。
まぐろも韓国産を扱っていて、今後ここを利用する事はないなぁ〜
同じ漁場で採れたとしても、その後の保管の仕方が信用出来ないので私はこれからも信用できるお店で国産を購入したいと思います。
いつも為になる記事ありがとうございます。
米粉倶楽部様へ
はじめまして、こんばんは。
Select Japan Closet 管理人 優です。
コメントをありがとうございます!
新しいスーパーに伴助の商品があったのですね。
でも今回の偽装表示問題を知っていた米粉倶楽部様には買って貰えなかった・・・これは伴助の裏切りに対する消費者の制裁で、当然のことだと思います。長年ここの魚を食べていた方も大勢居るでしょうから、同じようにお怒りの方も相当居そうです。
記事の中でも触れましたが、今回の偽装は「北海道産ブランド」にも傷を付けることになったので、非常に罪深いと思います。
しかしながら、長年積み上げて来た信頼が崩れてしまうのを見るのは残念なことです。
伴助の件を他山の石として、他の会社は同じような過ちを犯さないようにして欲しいです。
かなり反省しているでしょうが、私も米粉倶楽部様と同じく、今後ここのものを食べたいとは思わないですね〜(汗)
なので私も信用出来るお店で国産の美味しい魚を食べたいと思います。
私の拙い記事でも少しはお役に立っていると判って嬉しかったです。コメント、ありがとうございました!
今後も役に立てるように頑張ります〜。