先日、京都の食肉加工会社「都ジャパン」が宮崎県と鹿児島県のブロイラーを鳥取県産の「大山都どり」として偽装販売していたことが内部告発で明らかになり、社長が自首したという報道がありました。しかしこの件で「大山どり」が巻き添えになっています。あまりに気の毒だと思ったのでご紹介します。
「大山都どり」の偽装発覚
まずはソースをどうぞ。
産地偽装し鶏肉出荷、廃業へ 京都の食肉加工会社
京都市南区の食肉加工会社「都ジャパン」は17日、鳥取県産の自社ブランド「大山都どり」と偽って、販売価格が安い宮崎・鹿児島両県産のブロイラーを出荷していたと明らかにした。同社は廃業し、会社も清算するという。
鶏肉の産地偽装を明らかにし、記者会見で謝罪する「都ジャパン」の久後勝巳社長=17日午前、京都市南区同社は1月末に京都府警南署に偽装を伝えた。府警は不正競争防止法違反の疑いで会社から関係書類を押収するなどし、裏付けを進めている。
久後社長は記者会見で「モモ肉の需要が高く、それを賄える商品を準備したかった。産地から追加の供給を受けることもできなかった。心よりおわび申し上げる」と謝罪した。
日本海新聞:2016/2/17
http://www.nnn.co.jp/knews/160217/20160217095.html
大山都どりとは
「大山都どり」なるものをそもそも見たことも聞いたこともなかったので「大山都どり」の定義を調べましたが「大山都どり」の紹介しているようなページが無く、わかりませんでした。しかし「業務用食肉卸売り市場Mマート」が「大山都どり」を扱っていたため、その削除されたページのキャッシュを参考にします(Mマートさんは知らずに売っていた被害者なので誤解されませんように。今はもう販売されていません)
商品の説明文には「鳥取県大山で飼育日数を通常品より2週間程度長くして大きく育てた完熟鶏です。都どりという銘柄で販売いたしています。」と記載されていました。端的に表現すると「鳥取県大山で普通より大きく育てた鶏」ですね。これでブランド鶏とは言っちゃいけない気がします。
https://webcache.googleusercontent.com/search?q=cache:V34ujiUHpvoJ:https://www.m-mart.co.jp/menu/menu.php%3Fp_move_item%3D29909%26p_menu2%3D10+&cd=5&hl=ja&ct=clnk&gl=jp
大山どりと大山都どりは無関係
さて、今回の発覚を受けて巻き添え被害にあっている「大山どり」について調べました。すると「大山どり」ブランドについての公式HPがありました。そしてそこに悲痛な訴えを発見。迷惑なさっています。
事実、私も誤解しかけていました。なので、皆さんの周りに誤解している方がいたら教えてさしあげて下さい。
本日他社において、九州産のブロイラーを「大山都どり」という名前の袋に詰め替えて販売していた事が報道されております。
この件に関しまして、当社及び当社製品「大山どり」とは一切関係がございませんので、誤解無きようお願い致します。
*当社で飼育、製造(鶏肉処理加工)、及び販売を行っているのは「大山どり」「大山地どり」(いずれも当社の登録商標)です。
http://daisendori.co.jp/b/?p=124
大山どりとは
銘柄鶏「大山どり」には公式HPがあり、大山どりの定義も記載されていますので見に行かれると良いと思います。
現在の「大山どり公式HP」へどうぞ。
自社内で種鶏の育成・飼育、生鳥の飼育・処理までの一貫した生産体制を敷いており、生産・製造履歴を自社管理することにより、安全で安心な鶏肉を供給しています
飼料会社との共同開発による「大山どり専用飼料」を与えることにより、腸内細菌を整え、バランスの良い脂乗りと旨味を追求していますhttp://www.daisendori.co.jp/seihin/daisendori.html(ページが削除されました)
そもそも株式会社大山どりが作ったものでなければ「大山どり」ではないんですね。更に生まれただけではなく専用の餌で育てられた鶏だけが「大山どり」となる。ただ鳥取県の大山で育ったら「大山どり」になるわけではないのです。
それにしても名前が似過ぎです。「大山どり」「大山都どり」。下衆の勘ぐりと言われるかもしれませんが、既にある有名ブランドに似せた名前を付けて販売するやり口は某国のようで嫌悪感しかありません。
商品名の重要性
今回の件の問題点を考えてみました。もちろん偽装が一番悪い点です。しかしその前に既にある商品と似た名前で販売することについて、もう少し考えるべきなんだと思いました。
洋菓子「白い恋人」と「面白い恋人」裁判
類似名によるトラブルで思い出したのはやはり「白い恋人」「面白い恋人」です。
間違えて購入したという苦情発生
北海道の石屋製菓が1976年から販売している洋菓子「白い恋人」と似た名前である「面白い恋人」を2010年から吉本興業が発売し、消費者が間違って購入したなどの苦情がよせられたため、石屋製菓は吉本興業に対し、「商標」の侵害、「不正販売競争防止法」に基づいた商品の販売停止、破棄を求める裁判を2011年に起こしました。訴えを起こされた吉本興業は「面白い恋人」で商標登録しようとしましたが、特許庁は認めませんでした。
商標登録までしようとするなんて図々しいにもほどがある。
賠償金支払い無しの和解
この裁判は2013年に和解し、「面白い恋人」は、パッケージデザインを変更した上、関西6府県限定発売となりました。ちなみに吉本興業は賠償金をびた一文払った様子はありません。石屋製菓が賠償金として1億2千万円を申し立てたという報道はあっただけです。この記事を書いている時点で、wikipediaでも支払ったという記載はなく、私の調べた範囲でも支払ったというソースを見つけられませんでした。
不可解な和解内容
和解したとは言え、この結果についての率直な感想を言わせてもらうと「なにそれ納得出来ないんだけど」です。というのも、結局「吉本興業は石屋製菓の白い恋人に似た名前で販売して利益を得ることを許された」ことになったとしか見えないからです。
間違って商品を購入した人からの苦情もあったのに賠償金も払わないなんて、いったいどういう手を使ったんでしょう?だから私は絶対に「面白い恋人」は買いませんし、他人にすすめる事もしません。これはシャレや笑いで許されることじゃないと感じているからです。
「白い恋人」「面白い恋人」について他の方が書かれた記事があります。私の感情的な訴えより、冷静で専門的なので参考になります。
http://www.seirogan.co.jp/blog/2013/02/vs-2.html(大鳳薬品の中にありましたが削除されました)
自己防衛を!
「大山都どり」について「これは大山どりの類似品」であると「大山都どり」の動きを封じる何らかの動きをしていたら、今回の偽装事件は起こる事もなかったのではないかと思ってます。仮にそれでも起こったとしても、正規の商品「大山どり」のパッケージやその販売ページに「大山都どりとは全く関係ありません」と表示、記載する対応をしていたら、巻き添え被害も少しはマシだったのではないでしょうか。
大切なブランドだからこそ守らないとこういう輩がいいようにその利益を横取りしてしまいます。メーカーさんはもっと攻める防衛をしてほしい。
最後にひとこと
中国における「クレヨンしんちゃん」の商標問題は8年掛けてようやく勝利を得ました。「讃岐うどん」で有名な「讃岐」などの日本固有の地名も先に商標を取られましたが、無効の申し立てがようやく認められるようになっています。特許庁はこういうトラブルを未然に防ぐ為に先に商標取得をしましょうと訴えています。一般的なルールが通用しない共産党独裁の中国相手ではその方法でしか防衛できないんでしょうね。
しかし日本は独裁国家ではありません。国内で起こる「名前」や「商標」に関するトラブルは日本の法律の下に発生しています。「似た名前」を使用して本家のお店のお客をかすめ取ったり、類似品で消費者を騙したりする行為はもっと処罰されるようにならないのでしょうか。「商標ゴロ」を一網打尽に出来るような法制度が出来てほしいです。そうでなきゃ、大切に育てたブランドに傷がついてしまう。何とかならないものでしょうか。もやもやします。