ふわふわぬくぬくの羽毛布団。冬になると私もお世話になっています。しかし流通している羽毛布団の原材料である羽毛の産地が偽装されているという情報が飛び込んできました。これはかなり嫌なニュースです。というわけで、疑惑の詳細、そして羽根(ダウン)と羽毛(フェザー)の違いや布団の基礎知識、更に羽毛布団の正しい選び方などを勉強しました。
欧州産羽毛をうたって販売された半数が偽装
まずはソースをどうぞ。
羽毛布団「仏産の半分超が産地偽装」 業界団体が警告文
実際とは異なる産地が表示された多数の羽毛布団が市場に出回っている疑いが出ている。事態を重く見た羽毛布団の業界団体はフランス産として売られている羽毛布団について「半分以上は産地偽装」などとする警告文書を加盟社に送付したが、消費者には知らせていない。羽毛業者は「加工過程の中国で、高価な欧州産に低価格の中国産を混入させ水増ししている」と証言する。
羽毛布団メーカーなどでつくる日本羽毛製品協同組合(日羽協)によると、羽毛布団の国内販売枚数は年間約320万枚あり、その約半数の羽毛布団が中に詰める羽毛について主にフランスやハンガリー、ポーランドなど欧州の産地を表示しているという。残りは無表示や中国産などだ。
朝日新聞は日羽協が100社を超える加盟社に宛てた内部文書を2通入手。1通は2014年5月付で「適切な産地表示の徹底について」とあり食品偽装の社会問題化を受けて、「羽毛原料の国別輸入実績以上の欧州及び北米産表示の羽毛布団が市場にあふれている」と注意を促した。15年の財務省統計によると、羽毛原料の輸入先は中国が48%、台湾が29%で欧州・ロシアは17%だ。
だが改善されず、15年1月に、もう1通を配布した。「羽毛の原産地の偽装表示について」として、フランス産については「半分以上は偽装と思われる」。ハンガリー産などについても「産地の信憑性(しんぴょうせい)に欠ける。原産地の偽装表示は景品表示法違反や詐欺罪が適用される」と強く警告した。
2016年5月6日23時46分
http://www.asahi.com/articles/ASJ4F5WR6J4FUUPI003.html
数の合わない輸入量
羽毛布団の肝は羽毛の原産地、そしてその種類や質です。日本で人気があるのは、フランス産、ハンガリー産、ポーランド産、イギリス産などの欧州産の羽毛です。
しかし報道によって明らかになったのは、実際に輸入されている欧州産の羽毛布団の数よりも、国内で流通している数が多く、計算が合わない事です。これは明らかに偽物が混じっているということです。
布団とは?
布団とは、眠る際に身体にかけて使うもので「綿布団」「羽根布団」「羽毛布団」「羊毛布団」などがあります。それぞれ使われている素材により保温性、保湿性等に違いがあります。
- 綿布団 綿を詰めた布団。綿(真綿、木綿綿)の比率が50%以上のもの。
- 羽毛布団 水鳥のダウンを50%以上を使った布団。
- 羽根布団 水鳥の羽根を主に使用した布団で羽根布団より保温性などが劣るが低価格。
- 羊毛布団 羊の毛が詰められた布団です。比重が50%以上のもの。
羽毛(ダウン)と羽根(フェザー)の違い
羽根布団と羽毛布団が違うように、羽根と羽毛にも明確な違いがあります。
羽毛は水鳥の胸元にあるふわふわのたんぽぽの綿毛のようなもので、これがダウンです。水鳥の種類は「ダック(あひる)」と「グース(がちょう)」があり、身体の大きなグースダウンの方が大きく良質なので高価です。
一方羽根とは、芯のある毛、いわゆる赤い羽根共同募金のようなものを指します。羽根は多く取れるので安価に作れる傾向です。
今回の産地偽装の問題点
今回の産地偽装問題は、朝日新聞の報道で既に2014年から指摘されていたということが判りました。しかしそこから見えたのは二つの問題点です。
一つは今現在も偽装産地の羽毛布団が出回っていること、そしてもう一つは、偽装疑惑発覚時点で消費者に注意勧告を出さなかったことです。
是正に動いていた日本羽毛製品協同組合(日羽協)は一定の評価をしてもいいでしょう。しかし情報公開はしっかりとするべきだったのではないでしょうか。というのも、注意喚起が遅れた為に偽物の羽毛布団を買った人が確実に出ているからです。
実際、日羽協は今回の報道(2016/5/6)を受けてからコメントを発表しました。
羽毛ふとんの原産地表示に関する報道について
さて5月7日の朝日新聞朝刊に掲載されました、「羽毛ふとんの産地偽装疑惑に関する記事」に関しましてご報告申し上げます。
朝日新聞の報道の中で、羽毛ふとんの国内販売枚数は年間約320万枚とありますが、この内、当組合員企業の販売枚数は約90万枚、非組合員企業の販売枚数は約40万枚、輸入品は約190万枚となっております。
当組合では、これまで羽毛の原産地表示について、組合員各企業に対しまして、適切な原産地証明書等の書類を整備するように規定を設け、また指導してまいりました。
つきましては、市販されている一部の商品に産地偽装の疑いがあるとの朝日新聞報道を受け、改めて、組合員各企業に更なる厳しい管理を指導徹底致します。平成28年5月11日
朝日新聞の報道がなければ未だに沈黙して、産地偽装された羽毛布団が更に多く流通し続けたのではないかと思います。遅きに失した印象です。
報道前から指導していたのなら、消費者にも呼びかけてほしかった。気付いて指導していた事は評価されてしかるべき正しい行為だっただけにおしい。それとも注意喚起していたけどその声が小さかったのでしょうか。だとしたらその努力が足りなかった。
産地偽装が起こる背景
そもそもどうしてこのような産地の偽装が行われているのか?中国産の羽毛、羽根を使っているならそう書けば良い。でもそれでは売れない状況です。その証拠に日本国内で、日本の業者が偽装を行っている事例が多くあります。
詳しくは個別記事「鹿北製油が産地偽装|国産表示のゴマ油、なたね油、えごま油に外国産使用」や「また産地偽装|九条ネギに中国産・他府県産を混ぜて販売したとして京都「きむらてつ」社長ら3人逮捕」を参考にどうぞ。
こんな状況では、消費者が中国製、中国産を避けるのも致し方ありません。それに中国産や中国製であっても大手メーカーによりきっちり品質管理され、中国産と正しく記載されて適正な価格で売られていれば何の問題もありません。
しかし日本製、日本産として売って暴利を貪るのなら話は別です。偽装で失った信用は取り戻せません。偽装が相次いだ「鳴門わかめ」を我が家はもう買っていません。これが偽装で消費者を欺いた結果です。詳しくは個別記事「韓国産わかめなどを瀬戸内海産として販売|岡山県ホームグリーン社長逮捕」を参考にどうぞ。
産地偽装されていない羽毛布団を選ぶ方法
産地偽装されているならどうしたらいいのか。これが消費者の素直な気持ちです。そこで対策です。騙そうとするならこちら側が知識をつければいいのです。
布団を実際に触る、臭いを嗅いでみる
未だに偽物が流通しているため、偽物を買わないための方法、コツ、注意点を知った上で選ぶことが大切です。というわけで、どういうものがダメなのか知っておきましょう。
- 押してみて弾力があり、戻るかどうかをチェック。戻らないものはダメ。
- 叩いてもホコリがでないもの。
- 空気を出してから匂いを嗅ぐ。獣の匂いがしたらNG
- 布団の表面から羽毛が飛び出していない、出ていないもの。
- 良質なものは軽くて弾力がある。
認定書や保証書付きの商品
記載事実が正しいと信じるしかありませんが、認定書や保証書のある商品があるので、できるだけこういった商品を選ぶのも手です。
日本で唯一の羽毛専門の公的検査研究機関という「CIL コンフォートインデックスラボ(快適睡眠環境研究所)」の保証がついているもの。CILゴールドラベルの羽毛布団です。日本製。
CILブラックラベル。ハンガリー産の羽毛が使われています。日本製。
国の経済産業省の認可団体「日本羽毛製品協同組合(日羽協)」の品質認定ニューゴールドラベルのついた3年保証の羽毛布団です。日本製。
最後にひとこと
恐らく羽毛偽装は私たちの判らないところで今も行われており、完全に無くなる事はないでしょう。となるともう消費者が知識を持って選ぶしかありません。企業を当てに出来ない時代とは残念です。