私はまだ花粉症デビューをしていないのですが、花粉症関係の面白い新製品は無いかと調べていたら新素材のマスクを発見しました。ご紹介します。
これらの商品パッケージの記載内容について「合理的な根拠と認められない」ため、消費者に「優良誤認させている」と、消費者庁が再発防止の行政処分措置命令が出しました。ただしその効果を否定しているわけではありません。そのことを踏まえて買いましょう。(2019/7/5追記)
花粉を水に変える「ハイドロ銀チタン」のシャツ
新素材「ハイドロ銀チタン」を知るきっかけになったニュースを一つ。
“花粉を水に変えるシャツ”が登場!2018年大注目の「ハイドロ銀チタン®」を「アイシャツ」に搭載『ハイドロ銀チタン®i-shirt』発売
はるやま商事株式会社(本社:岡山県岡山市、代表取締役社長 伊藤 卓)は、快適な着心地と完全ノーアイロン※1などの優れた機能により累計販売250万着※2を突破した大ヒット商品「i-shirt(アイシャツ)」に、花粉やハウスダスト等のタンパク質を水に変える「ハイドロ銀チタン®」を搭載した、『ハイドロ銀チタン®i-shirt』を、2018年2月10日(土)より全国のはるやま店舗(2018年1月末日時点252店舗)にて発売いたします。
■2018年大注目!医師が考えた新しい技術「「ハイドロ銀チタン®」
医師の新しい発想で生まれた「ハイドロ銀チタン®」は、タンパク質を分解する新素材です。花粉、ハウスダスト、カビ等のタンパク質や、ニオイのもととなる不衛生タンパク質を分解して水に変える、「DR.C医薬」独自のクリーン技術です。原材料の成分は、ファンデーションの主成分である酸化チタンであるため、安全性の高い物質。ハイドロキシアパタイトの抑制機能により過剰反応を防ぐため、花粉・カビ・ハウスダスト内のタンパク質にのみ反応し、肌に優しく、安全です。
後略
PR TIMES:2018年2月9日 15時00分
プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES
花粉を水に変えるなんて出来るのか?
医師が考えたハイドロ銀チタンとは
初めて聞いた素材「ハイドロ銀チタン」について調べてみると、公式サイトがありました。
詳しいことは公式で。でも素人には「たんぱく質を水に分解する新素材」という理解でいいと思います。
たんぱく質を水に分解する
「ハイドロ銀チタン」の主な原材料は、女性が顔に塗っているファンデーションの「酸化チタン」で、たんぱく質を水に分解する性質を持っています。
どんなたんぱく質を分解する?
「ハイドロ銀チタン」が分解するたんぱく質は、花粉だけでなく、汗やカビ、臭い、ハウスダストです。
正直なところ、説明を読んで「ホントか!?」と疑いたくなりますが、既にこの新素材を使用した製品が続々と登場しており、はるやまのシャツもその一つでした。
ハイドロ銀チタン素材を使用した「i-shirt(アイシャツ)」
はるやまで「i-shirt(アイシャツ)」にハイドロ銀チタン素材のものが2/10の今日からラインナップされています。
アイシャツは、完全ノーアイロンで大人気の商品だそうです。毎日カッターを着替えるサラリーマンに人気が出るのは理解できます。
その人気のシャツに花粉や汗などを分解する素材を使ったとなれば、試したい人が多くでるでしょうね。
ハイドロ銀チタンを使用した製品
「ハイドロ銀チタン」を知るきっかけになったのは、はるやまのシャツでした。しかし既に多くの製品が世に出ています。
アフタヌーンティーからは、花粉を水に変える「魔法のタオル」が出ています。
Afternoon Tea LIVINGに、ハイドロ銀チタン®で、花粉を水に変える“魔法のタオル”が登場!2/8(木)~Botanical New Life
市川 海老蔵さんが青い竜となり、花粉を撃退!?マスクの上からのぞく迫力ある表情、目力にも注目DR.C医薬 「花粉を水に変えるマスク」の新CM2018年2月1日(木)より全国で順次放映開始
他にもミズノがハンカチタオル、ワコールが肌着、福助が靴下、カイタックファミリーがパジャマなどかなり多数の商品が市場に出回りそうです。
他にもあるので、ハイドロ銀チタン素材のサイトをご覧下さい。
そうそう、マスクは、原産国:日本となっていたものの、商品パッケージの裏には「made in china」とあったので、現物の確認をしてから購入した方が良さそうです。私は使いたくない。
疑似科学では?という指摘(2018/3/23 追記)
「何故花粉が水になるのか」全く判りませんが、はるやまやワコール、ミズノなど多くのメーカーが続々と「ハイドロ銀チタン」素材の商品を出していることから、懐疑的ではあったものの、まあ効果はあるんだろうと思っていたのですが、当然それに異を唱える人が出てきました。
異を唱えているのは五本木クリニックの院長さん。当該ページでお読み下さい。
花粉を水に変えるマスク、その効果は医学論文で明らかに・・・なってないよ!!
参考 https://www.gohongi-beauty.jp/blog/?p=24654
医療・科学の専門知識が無い私でも院長さんの指摘で気になった点が2つありました。
前略
花粉症対策の医学論文は多数あります。その中で今回題材とした花粉症を水に変えるマスクに関する医学系論文を見つけました。それは「アレルギー性鼻炎及び花粉症に対するハイドロ銀チタンシート(HATS)の臨床的有用性の検討」という論文で社会医学研究というあまり見慣れない学術誌に掲載されています。
中略
この論文を書いた人って花粉を水に変えるマスクを開発販売している会社の経営者じゃん!!
後略
ハイドロ銀チタンの効果を支える論文がそのハイドロ銀チタンの会社の経営者・・・。まあでも自分で凄いものを作ってそれを商売にする人は居ますから、経営者が書いた論文じゃ宛にならないと言い切れません。ただ「効果はある」というバイアスが掛かっている可能性は否定できない。
前略
人間の皮膚はもちろんタンパク質で作られていますので、このマスクを使用するとマスクが密着した部分の皮膚も水になっちゃうのでしょうか?こんなことが起きてしまったら健康被害という事態が発生してしまいます。今のところ健康被害情報は見当たらないので、皮膚に悪い影響は無いのでしょうね・・・ってことは、ハイドロなんとかの効果自体も疑問が、ってこと?
後略
皮膚もたんぱく質です。ハイドロ銀チタンは「たんぱく質を水を変える」という仕組みです。確かに健康被害は無いのか不安。
消費者庁から行政処分命令(2019/7/5追記)
疑似科学の疑惑ありと追記していましたが、消費者庁から「根拠が認められない」として再発防止の行政処分命令が出ました。ソースです。
「花粉分解」マスク “根拠認められない” 消費者庁
着用すれば「花粉を分解する」などと宣伝して販売されていたマスクについて、消費者庁は、表示のような効果を示す合理的な根拠は認められないとして、東京や仙台の4つの会社に対し、現在の表示を速やかにやめ、再発を防止することなどを命じる行政処分を行いました。
処分を受けたのは、
▼東京 新宿区の「DR.C医薬」、
▼仙台市青葉区の「アイリスオーヤマ」、
▼東京 豊島区の「大正製薬」、
▼東京 千代田区の「玉川衛材」の4つの会社です。消費者庁によりますと、これらの会社は、光を当てるとたんぱく質などを分解するという「光触媒」の物質をマスクの素材に混ぜたうえ、パッケージに、「花粉を水に変える」「光で分解」などと表示して販売していました。
しかし、消費者庁が表示の裏付けとなる資料の提出を会社に求めたところ、そのような効果を示す合理的な根拠は認められなかったということです。
このため消費者庁は、これらの表示が消費者に誤解を与えるとして、景品表示法に基づいて4つの会社に対し、現在の表示を速やかにやめることや、再発防止などを命じる行政処分を行いました。
「DR.C医薬」は、新規の出荷を取りやめたとしたうえで、「表示上の問題で、効果を否定するものではないと認識している。今後は表示の在り方について検討し、より一層適正な表示に努めたい」と話しています。
「アイリスオーヤマ」は、該当する製品はすでに販売を終了しているとしたうえで、「購入されたお客様や、関係者の皆様に心よりおわび申し上げます。今回の命令を重く受け止め、再発防止に努めます」と話しています。
「大正製薬」は、「科学的根拠に基づいて開発を行い、合理的な根拠により表示していると認識していて、命令は誠に遺憾です。命令は、提出した科学的根拠を全く無視した内容で、合理的なものでないと考えています。今後、法的にとりうる対応や措置を検討中です」とコメントしています。
「玉川衛材」は、「命令は合理的な根拠が十分でなかったというもので、効果自体が否定されたものではありません。今後は文言の追加や修正をするなど適正に対応します」とコメントしています。
NHK NEWS WEB:
エラー|NHK NEWS WEB
「根拠が認められない」だけで「効果がない」とはされていません。なので今回の行政処分によって、商品名やその説明文、キャッチコピーなどに変更が加えられて販売は続けられます。
消費者庁の行政命令詳細
消費者庁は、景品表示法第五条の一に基づき、商品パッケージに記載されている内容が消費者に「優良誤認」させているから表示を変えろという行政処分を出しました。
景品表示法
(目的)
第一条 この法律は、商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の 誘引を防止するため、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのあ る行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護することを 目的とする。
(不当な表示の禁止)
第五条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに 該当する表示をしてはならない。
一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると 示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択 を阻害するおそれがあると認められるもの
今回処分対象になったマスクの表示には、花粉やほこり、悪臭などの原因物質が「ハイドロ銀チタン」や「V-CAT」などの光触媒によって水に分解され、体内に吸収されることを防ぐ効果があるとうたってありました。
しかし消費者庁がその根拠とされる資料を精査した結果、それらの商品に記載されている商品説明や文言の「根拠」としては認めないと判断したのです。ただし効果を否定していませんので、表示内容を変えて売り続けることはできます。
端的に言うと「表現が大げさだ」ということです。「花粉を水に変える」という表現は、消費者には分かりやすいですが、いきすぎているということでしょう。
詳しくは消費者庁で公開されているPDFファイルを直接どうぞ。
令和元年7月4日光触媒を使用したマスクの販売事業者4社に対する景品表示法に基づく措置命令について(PDFファイル)
各社の反応
行政処分命令が出された各社の反応です。個人的に大正製薬の反応はいただけない。
DR.C医療
「花粉を水に変えるマスク」というそのままの商品名を出しているDR.C医療のニュースリリースです。
2019年7月4日Projectニュース
消費者庁措置命令について
この度は、弊社マスク(以下「対象マスク製品」と申します。)のパッケージ上の「花粉を水に変える」等の表現に関し、消費者庁から措置命令を受けましたことにより、お客様ならびに関係者のみなさまに、多大なるご心配をおかけしましたことをまずは深くお詫び申し上げます。
弊社が受けました措置命令は、対象マスク製品のパッケージ上の一部の表現につきまして、消費者庁に、弊社が提出した根拠資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかったことにより受けたものであり、それらの表現が事実と異なっていると積極的に事実認定されたものではありません。
弊社といたしましては、製品の広告表現に関しては、消費者の皆様に誤解を生じることのないように、文献や外部機関に委託して行った試験結果等に基づいた適正な表示に努めており、対象マスク製品の表示の根拠につきましても消費者庁に対して真摯に説明をして参りましたが、十分な理解を得ることができませんでした。今回の措置命令につきましては、その内容を精査したうえで、今後の対応等を検討して参る所存ですが、弊社製品の表示につきましては、今回、措置命令を受けましたことを厳粛に受け止め、今後、より一層適正な表示に努めて参る所存です。後略
DR.C医療
お探しのページは見つかりませんでした | DR.C医薬株式会社(ブランドサイト)DR.Cチタンは、タンパク質を分解する触媒物質です。花粉・ハウスダスト・カビ等のタンパク質や、汗・ニオイ・不衛生タンパク質を分解して水に変える、DR.C医薬独自のクリーン技術です。 アレルギー抗原を分解し、吸入量を下げ、体内での抗体産生量を増やさないようにする...
アイリスオーヤマ
最後のニュースリリースは6月27日の分で、2019年7月5日現在、この件に触れている記事は見当たりません。すでに販売が終了しているからかもしれませんが、購入者がいる以上何らかのコメントは必要だと思います。
玉川衛材株式会社
ニュースリリースで今回の件についての謝罪と対応が書かれていました。
2019年7月4日玉川衛材株式会社消費者庁からの措置命令に関するお知らせ
平素は弊社製品に格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。 弊社は、本日、消費者庁より、「フィッティ吸着分解マスクスーパーフィット ふつう」及び「フィッティ吸着分解マスクスーパーフィットやや小さめ」(以下、「本製品」といいます)のパッケージ表示の一部に関して、不当景品類及び不当表示防止法(以下、「景品表示法」といいます)第5条の規定により禁止されている同条第1号に該当する不当な表示を行っているとして、同法第7条第1項の規定に基づき措置命令を受けました。本件により、お客様をはじめとする関係各位に多大なるご迷惑をおかけ致しましたことを、心より深くお詫び申し上げます。
弊社は、本製品を一般消費者に販売するにあたり、2015年9月11日より本製品パッケージにおいて、「かぜ 花粉 ハウスダスト 黄砂 PM2.5 しっかり対策」「フィッティ吸着分解マスク スーパーフィット」「しっかり吸着 光で分解」「光触媒チタンアパタイト採用」「光触媒チタンアパタイトとは 東京大学と(株)富士通研究所で共同開発された花粉※1・細菌・ウイルスなどの空気中の有害物質を従来の光触媒より格段に高い吸着力でとらえ、太陽の光によって分解[CO2(二酸化炭素)+H2O(水)]する素材です。特許3697608号」「※1花粉はアレルゲンとしての意味です。」と表示しております。
これらにつき、あたかも、本製品を装着すれば、太陽光下において、本製品に含まれる光触媒の効果によって、本製品表面に付着した花粉由来のアレルギーの原因となる物質、細菌及びウイルスを化学的に二酸化炭素と水に分解することにより、これらが体内に吸入されることを防ぐ効果が得られるかのように示す表示であるとして指摘を受けました。
当社は、かかる表示について、消費者庁からの求めに従い資料を提出致しましたが、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであるとは認められないと判断されました。それにより、本製品の表示は一般消費者に対し実際のものよりも著しく優良であると示すものであり、景品表示法に違反するものであるとの指摘を受けました。
本措置命令に関して消費者庁から指摘された内容は、本製品のパッケージ表示が虚偽表示であったというものではなく、あくまで当該表示の裏付けとなる合理的な根拠が十分ではなかったというものであり、本製品の光触媒効果自体が否定されたものではありません。今後におきましては、パッケージの文言の追加や修正を実施するなど、適切に対応してまいる所存です。
後略
玉川衛材株式会社
大正製薬
大正製薬だけは強く反発しています。ニュースリリースをどうぞ。
本日、消費者庁から当社に対して当社製品パブロンマスク365(以下、パブロンマスクといいます)の光触媒の効果に関する表示について問題があるとして、措置命令が出されました。
当社としては、パブロンマスクについては、光触媒が有するウイルス、細菌、花粉の除去の効果に関する科学的根拠に基づいて製品開発を行い、その合理的な根拠に基づいて製品パッケージ表示していると認識しており、消費者庁から措置命令が出されましたことは誠に遺憾であります。
今回の措置命令の指摘事項は、当社が消費者庁に提出した科学的根拠を全く無視した内容で、合理的なものでないと考えております。今後、法的に採り得る対応・措置を検討中です。大正製薬よりhttps://www.taisho.co.jp/company/release/2019/2019070401.html
個人的にこの企業姿勢は如何なものかと思います。今回の消費者庁の措置命令は「消費者に優良誤認させているからやめなさい」という内容であり、決してその効果を否定しているわけではありません。
「売れるためならどんなことを書いてもいい」とでも思っているのでしょうか?しかも法的な対応の検討までしているその態度は傲岸不遜で不愉快です。でもやればいい。裁判で白黒決着をつけるのも面白い。
最後にひとこと
技術や研究は日々進歩していますね。とは言え、新しいものはまだ実証期間が短いのが気になります。なのでまずはハンドタオルから試してみたいと思います。
2018/3/23 追記
ハンドタオルすらまだ買ってなくて良かった。
2019/7/5 追記
やっぱり何も買ってなくて良かった。