先日、今年の3月15日までに「マンション管理規約」で「住宅宿泊事業(民泊)禁止」を記述しないと大変なことになるという警鐘を鳴らす内容がツイッターでありました。ちょうど昨年末に「住宅宿泊事業法(民泊新法)」のガイドラインが発表されたばかりなので、「民泊新法」の基礎知識を勉強しつつ、「マンション管理規約」を早急に変更するべき理由を調べました。
民泊と民泊サービスの違い
当サイトでは地方での農業体験目的などでの農家などの民家への宿泊を「民泊」と呼び、都市部などでの来日外国人観光客を一般住宅に宿泊させることを「民泊サービス」と記述しています。「民泊サービス」という名を使った法律はありませんので、あくまでも呼び名であることを留意してください。
ただどうやら行政も都市部などでの民泊を「民泊サービス」と呼ぶようになっているので、「民泊サービス」という呼び名の定義は間違いではないと認識して良さそうです。
参考 民泊サービスを始める皆様へ ~簡易宿所営業の許可取得の手引き~(厚生労働省)
新たな法律「住宅宿泊事業法(民泊新法)」
「民泊サービス」に関する新しい法律「住宅宿泊事業法(以降民泊新法)」は、昨年の平成29年3月に閣議決定され、同年6月9日に可決されました。「民泊新法」は同年6月16日に公布され、今年の平成30年6月15日から施行されます。
参考 「住宅宿泊事業法案」を閣議決定(PDFファイル/国土交通省資料)
「民泊新法」の指針、いわゆるガイドラインが昨年末に公表され、それと同時に担当省庁の姿勢も報道されていました。ソースをどうぞ。
民泊の過剰規制は避けて=条例制定の指針公表-国交、厚労両省
国土交通省と厚生労働省は26日、空き部屋に旅行者らを有料で泊める「民泊」をめぐり、自治体が独自に制定する条例のガイドラインを公表した。条例で年間の営業日数を「0日」としたり、禁止区域を「住居専用地域全域」としたりするなど過剰な規制を避けるよう求めた。
来年6月施行の住宅宿泊事業法(民泊新法)は年間営業日数の上限を180日と規定している。民泊は騒音発生などで周辺住民の生活環境を悪化させるとの懸念もあり、東京都新宿、大田区が独自の規制条例を制定したほか、全国各地の自治体で同様の動きが見られる。
観光庁は「国が一律に判断基準を示すのは難しい。条例で制限する場合には法の趣旨に照らして慎重な検討をしてほしい」と自治体に要請している。時事通信社:2017/12/26-20:07
民泊の過剰規制は避けて=条例制定の指針公表-国交、厚労両省
https://www.jiji.com/jc/article?k=2017122600814
「過剰規制は避けて」と言われても、自宅の隣にテロリストが泊まれるようになるわけですから無茶を言わないで欲しい。
フランスで起きたテロの犯人が民泊を利用していたのは周知の事実で、その経験や民泊によって発生している多くのトラブルやその危険性について訴えにきてくれたフランス人の生の声を忘れてはいけません。
民泊新法の概要
新しく公布された民泊新法の概要です。法律自体は当然ながら様々なことが長々と難しく、法律用語で記載されているため、一般人には判り辛いものです。よって私個人の読解になりますが、ざっとした概要と重要な点、知っておかなくてはならないと思った点をピックアップします。
一番良いのは直接法律を読むことなので、時間のある方はどうぞ。
基本情報
「民泊サービス」を運営するために最低限必要なことや主な条件です。
- 民泊サービスを運営するには都道府県知事への届け出と国土交通省の登録が必要
- 家主の居ない民泊サービス施設は住宅宿泊管理業者への委託が必要
- 住宅宿泊管理業者は国土交通省への登録が必要(5年ごとに更新)
- 住宅宿泊仲介業者(宿泊予約サイト等)は観光庁への登録が必要
- 年間180日の営業
- 民泊サービス施設の基本ルール遵守(標識掲示・宿泊者名簿作成義務等)
- 民泊サービス運営は所在している自治体の条例を遵守
- 違反業者、違反者への罰則(100万円以下の罰金、1年以下の懲役等)
住宅宿泊事業者とは
「住宅宿泊事業法」を理解するために、まず基本的なことを頭にいれておきましょう。
「住宅宿泊事業法」に則り、「民泊サービス」を運営するにはまず各都道府県知事への「届け出」と国土交通省への登録をし「登録番号」を取得しなければなりません。
民泊サービスは「登録制」
なんらかの業などを営む行為において、その営業について様々な制度が適用されますが、違いがあります。
- 「届出制」文字通り届出れば営業出来る。届出は基本的に拒否できない。
- 「登録制」当該行政などへの届出しても、審査次第で登録出来ないことがあり、登録後も違反があれば取消可能。
民泊サービスがもし「届出制」であったら、「届け出」さえ出せば誰でも運営できることになり大変なことになったでしょう。しかし民泊新法の規定する「民泊サービス」は登録しなければ運営できないので、どこででも誰にでもできることはありません。
家主が居ない民泊サービス運営には管理委託が必要
「住宅宿泊事業者」は「民泊サービス」施設を提供し、運営する者ですが、「住宅宿泊事業者」は「家主在宅型」と「家主不在型」の二つに分けられます。
- 「家主在宅型」家主が居住している住宅で民泊サービスを行う
- 「家主不在型」家主が居住していない住宅(別荘、所有している不動産の空き部屋等)
民泊サービスを運営する「住宅宿泊事業者」には、部屋の清潔を保つことや設備等の維持管理等、規定に則った民泊サービス施設を提供することも義務とされています。
「家主不在型」の「住宅宿泊事業者」は「設備の維持管理」や「宿泊名簿作成」や「騒音対策」「近隣住民からの苦情受付」などを出来るように「住宅宿泊管理業者」への委託が義務となっています。
住宅宿泊管理業者は5年おきの更新制
家主不在の民泊サービス施設を管理する「住宅宿泊管理業者」は国土交通省に登録をし、さらに5年おきの更新が必要です。
第三章 住宅宿泊管理業
第一節 登録
(登録)第二十二条
住宅宿泊管理業を営もうとする者は、国土交通省の登録を受けなければならない。
2
前項の登録は、五年ごとにその更新を受けなければ、その期間の経過によって、その効力を失う。
しっかり管理出来ない業者を排除できる仕組みですね。
住宅宿泊仲介業者は観光庁への登録が必要
「住宅宿泊仲介業」とは「住宅宿泊管理業者」と「宿泊者」の間に入り、契約を結ぶ行為を行うことです。いやゆる「民泊サービス」の予約サイトなどがそれに当たります。
しかし誰もが「住宅宿泊仲介業」を行えるわけではなく、観光庁への登録が必要です。これは良い規定ですね。
住宅宿泊業法
(定義)
第二条
8
この法律において「住宅宿泊仲介業務」とは、次に挙げる行為を言う。
一
宿泊者のため、届出住宅における宿泊のサービス提供を受けることについて、代理して契約を締結し、媒介をし、又は取り次ぎをする行為
二
住宅宿泊事業者のため、宿泊者に対する届出住宅における宿泊のサービス提供について、代理して契約を締結し、媒介をする行為
住宅宿泊事業の届出開始日
「民泊サービス」の運営をするにあたっては、事前準備も可能です。それは「住宅宿泊事業法」の附則に記載されています。
住宅宿泊事業法
附則
第一条
この法律は、公布の日から起算して一年を越えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、政令および附則第三条の規定は、公布の日から起算して九月を越えない範囲内において政令で定める日から施行する。(準備行為)
第二条
住宅宿泊事業を営もうとする者は、この法律の施行の日(以下「施行日」という。)前においても、第三条第二項の規定の例により、都道府県知事(第三校前段及び第四項の規定により保健所設置市の長が第三項前段の公示をし、その日から起算して三十日を経過した場合における当該保健所設置市等の区域にあっては、その長)に届出をすることができる。この場合において、その届出をした者は、施行日において同条第一項の届出をしたものとみなす。
この準備行為についての政令が出ています。
政令第二百七十二号
住宅宿泊事業法の施行期日を定める政令内閣は、住宅宿泊事業(平成二十九年法律第六十五号)附則第一条の規定に基づき、この政令を制定する。
住宅宿泊事業法(以下「法」といい、附則第一条ただし書に規定する規定を除く。)の施行期日は平成三十年六月十五日とし、同条ただし書に規定する規定のうち次の各号に掲げる規定の施行期日はそれぞれ当該各号に定める日とする。一
法附則第二条第三項及び第四項並びに第三条の規定 この政令の公布の日
二
法附則第二条第一項及び第二項の規定 平成三十年三月十五日
私がツイッターで見た「3月15日までに」という警告はこのことだと理解しました。ただし、「民泊サービス」は届出制ではなく「登録制」です。
民泊新法案が出た頃は「登録制」という記載がなかったので「届出制」になるという流れで報道されていました。しかし可決された「民泊新法」では都道府県知事への「届出」に加え、国土交通省や観光庁への登録が必要となっています。
よって3月15日は「届出開始日」という単純な認識で良いでしょう。ただし、分譲マンションでの民泊サービスに関する届出が行われる場合は注意が必要です。分譲マンションでの民泊サービスについては別項目で更に後述します。
民泊サービスを運営できる住宅施設の定義
先述したように「民泊サービス施設」には守るべきことがあります。それはまず「民泊サービス施設」として利用出来る条件とその「民泊サービス施設」の維持管理義務です。
民泊サービス施設に出来る部屋の条件
- 「現に人の生活の本拠として使用されている家屋」
- 「入居者の募集が行われている家屋」
- 「随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋」
この三つは民泊新法の第2条の第1号から第3号に規定されているものです。
簡単に説明や補足をすると
- 人が住んでいる住居(生活実態があること)
- 到底入居しないような条件(高すぎる家賃)で募集しているフリをしている住居はダメ
- 週末だけ使っている部屋や1年に最低1度は使う別荘などで運営できるが、投資マンションはダメ
といったところでしょうか。
住宅宿泊事業法
第二条
この法律において「住宅」とは、次の各号に掲げる要件のいずれにも該当する家屋をいう。一
当該家屋内に台所、浴室、便所、洗面設備その他の当該家屋を生活の本拠として使用するために必要なものとして国土交通省令・厚生労働省令で定める設備が儲けられていること。
二
現に人の生活の本拠として使用されている家屋、従前の入居者の賃貸借の期間の満了後新たな入居者の募集が行われている家屋その他の家屋であって、人の住居の用に供されていると認められるものとして国土交通省令・厚生労働省令で定めるものに該当すること。2
この法律において「宿泊」とは、寝具を使用して施設を利用することをいう。
民泊サービス施設の維持管理義務
不潔な部屋、設備の揃わない部屋は「民泊サービス施設」としては不適格です。更に宿泊者の安全性の確保もしなくてはなりません。
住宅宿泊事業法
第二節
業務
(宿泊者の衛生の確保)
第五条
住宅宿泊事業者は、届出住宅について、各居室(住宅宿泊事業の用に供するものに限る。第十一条第一項第一号において同じ。)の床面積に応じた宿泊者数の制限、定期的な清掃その他の宿泊者の衛生確保を図るために必要な措置であって厚生労働省令で定めるものを講じなければならない。
(宿泊者の安全の確保)
第六条
住宅宿泊事業者は、届出住宅について、非常用照明器具の設置、避難経路の表示その他の火災その他の災害が発生した場合における宿泊者の安全の確保を図るために必要な措置であって国土交通省令で定めるものを講じなければならない。後略
海外の旅行客にも判るように英語表記なども必要ですから、民泊サービス施設にする住宅には、それなりにお金をかけて設備を整える必要がありますね。
180日以内の営業
実は個人的に一番気になっていた規定です。平成29年3月に発表された民泊法案では「180日の営業」とあって、これは180泊という解釈ができ、1日おきに宿泊した場合、360日営業となります。これは明らかに民業圧迫に当たるのではないかという指摘があり、私もそう思っていました。
“民泊法案”1泊2日でほぼ通年営業も可に
政府が今国会に提出を予定している「民泊」の営業基準を定めるための法案の概要が明らかになった。客の受け入れ方によっては、ほぼ一年を通した営業を認める内容となっている。
法案では観光業界への配慮などから「人を宿泊させる日数として1年間で180日を超えない」と上限を定めている。ただし、宿泊日数で上限を定めていることから1泊2日の客を1日おきに泊めた場合、年間360日の営業が可能になるなど客の受け入れ方によってはほぼ一年を通した営業ができる仕組みとなっている。
また、「民泊」をめぐっては近隣住民とのトラブルも指摘されているが、都道府県が騒音などの影響が深刻だと判断した場合には条例により営業日数の上限引き下げを可能にすることも盛り込まれている。
政府は今後、与党との最終調整を進め来月10日の閣議決定を目指している。
日テレニュース:2017年2月24日 20:40
“民泊法案”1泊2日でほぼ通年営業も可に|日テレNEWS NNN政府が今国会に提出を予定している「民泊」の営業基準を定めるための法案の概要が明らかになった。客の受け入れ方によっては、ほぼ一年を通した営業を認める内容となっている。 法案では観光業界への配慮などから「人を宿泊させる日数として1年間で180日を超えない」と上限...
しかし可決された法律を見てみると360泊の解釈はできません。日数は一年間で180日を越えないものとされたからです。
3
この法律において「住宅宿泊事業法」とは、旅館業法(昭和二十三年法律第百三十八号)第三条の二第一項に規定する営業者以外の者が宿泊料を受けて住宅に人を宿泊させる事業であって、人を宿泊させる日数として国土交通省令・厚生労働省令で定めるところにより算定した日数が一年間で百八十日を越えないものをいう。住宅宿泊事業法 第二条 3
住宅宿泊事業法(pdfファイル)
施設の維持管理や義務、そして宿泊客への責任などを厳しく規定している「旅館業法」という法律に則って営業している旅館やホテルと「住宅宿泊事業法」の緩いルールで運営できる「民泊サービス」が、既にある旅館やホテルと変わらない日数の営業を出来るならば、同じように「旅館業法」に従って運営しないと不公平になります。なのでこの決まりは当然のことでしょう。
標識(看板)の掲示義務
これは「民泊サービス施設」ではない住宅へ利用者が訪れてしまうことがあり、迷惑を被っている周辺住民から苦情が出ていたことから規定されたルールです。
第十三条
住宅宿泊事業者は、届け出住宅ごとに、公衆の見やすい場所に、国土交通省令・厚生労働省令で定める様式の標識を掲げなければならない。住宅宿泊事業法(13ページ)
住宅宿泊事業法(pdfファイル)
住宅宿泊事業法の定める標識の様式は、発表されたガイドラインに記載されていますが、その規定は甘い印象です。
というのも、標識のサイズ規定はいいとして、表示する位置について「公衆が認識しやすい位置に掲示することが望ましい」とあり、掲示する位置の厳しくないからです。
ただしこの甘さは、各自治体の条例でカバーできるでしょう。標識には「届け出番号」「住宅宿泊事業者の連絡先」を記載しなくてはならないので、その番号を発行する際に「規定のサイズ、デザインを守った共通の標識を渡す」ようにすれば、判りにくいデザインでの標識にすることを防げるからです。
とは言え、「登録番号」をシールにすることも許されているので、どうなるかまだ判りません。想定される事例としては、判りにくい場所に標識を掲示したりすることでしょう。それを防ぐにはやはり自治体による「掲示位置」の厳しい指定ではないでしょうか。
標識の掲示(法第13条関係)
①標識の掲示に関する考え方について
・標識は、届出住宅の門扉、玄関(建物の正面の入り口)等の、概ね地上 1.2メートル以上 1.8 メートル以下(表札等を掲げる門扉の高さから玄関ドアの標準寸法 2メールの高さ以内)で、公衆が認識しやすい位置に掲示することが望ましい。
・標識の掲示に当たっては、ラミネート加工等の風雨に耐性のあるもので作成又は加工を施すことが望ましい。
・共同住宅の場合にあっては、個別の住戸に加え、共用エントランス、集合ポストその他の公衆が認識しやすい箇所へ簡素な標識(※)を掲示することが望ましい。
なお、分譲マンション(住宅がある建物が二以上の区分所有者が存する建物で人の居住の用に供する専有部分のあるものである場合)の場合は、標識の掲示場所等の取扱いについて、予め管理組合と相談することが望ましい。
・戸建て住宅の場合にあっても、届出住宅の門の扉(二世帯住宅等で玄関が複数ある場合や、住宅宿泊事業者が自己の生活の本拠として使用する住宅と届出住宅が同一の敷地内にある場合等)、玄関(門扉から玄関まで離れている場合等)等への掲示によるだけでは、公衆にとって見やすいものとならない場合には、簡素な標識(※)を掲示することが望ましい。
※簡素な標識とは、例えば、標識の一部分を、集合ポスト等の掲示が可能なスペースに合わせて掲示するといった方法が考えられる。
②標識の発行に関する考え方について
・届出番号、住宅宿泊事業者等の連絡先等の正確な記載を確保し、また、記載事項の把握を容易にする観点等から、都道府県等が標識を発行する場合には、省令の様式に基づき届出を受け付けた都道府県等がその長の名称を記載した上で、発行するものとする。
・この際、都道府県等において、様式を変更しない限りにおいて、偽造防止の観点からロゴマークを空いているスペースに記載すること、特殊なシールを貼付すること等様式に上乗せしても差し支えない。
標識に関する利権ができないか?
「標識」掲示義務があるということはそれに付随して発生する利権問題を想定しなくてはなりません。
自治体による「決まったデザインの標識」や「登録番号シール」を住宅宿泊事業者へ渡すという条例が出来た場合、それらの「標識」「登録番号シール」の作成をどこに依頼するかなどについてもしっかり見張る必要があります。
そうでないと特定の業者への利益供与に繋がる可能性があるからです。いわゆる「決まったデザインのゴミ袋」でないとゴミ収集出来ないという自治体の利権問題と同じですね。杞憂に終わると良いのですが。
宿泊者名簿作成義務
「民泊サービス」を運営する個人、業者は、最低限守らなければならない規定が複数あります。その一つが、利用者の名簿を作成する義務です。
(宿泊者名簿の備付け等)
第八条
住宅宿泊事業者は、国土交通省令・厚生労働省令で定めるところにより届出住宅その他の国土交通省令・厚生労働省令で定める場所に宿泊者名簿を備え、これに宿泊者の氏名、住所、職業その他の国土交通省令・厚生労働省令で定める事項を記載し、都道府県知事の要求があったときは、これを提出しなければならない。2
宿泊者は、住宅宿泊事業者から請求があったときは、前項の国土交通省令・厚生労働省令で定める事項を告げなければならない。
住宅宿泊業法における宿泊者名簿についてはこの記載しかありませんでしたが、ガイドラインには細かい規定が記載されています。一番の懸案事項である「外国籍」の観光客についてのことです。
(4) 宿泊者名簿の備付け(法第8条関係)
①本人確認の方法等について
・ 国・厚規則第7条第1項柱書に規定する「宿泊者名簿の正確な記載を確保するための措置」として、宿泊行為の開始までに、宿泊者それぞれについて本人確認を行う必要がある。・ 上記の措置は、対面又は対面と同等の手段として以下のいずれも満たす ICT(情報通信技術)を活用した方法等により行われる必要がある。
A 宿泊者の顔及び旅券が画像により鮮明に確認できること。
B 当該画像が住宅宿泊事業者や住宅宿泊管理業者の営業所等、届出住宅内又は届出住宅の近傍から発信されていることが確認できること。なお、当該方法の例としては、届出住宅等に備え付けたテレビ電話やタブレット端末等による方法が考えられる。中略
1 宿泊者に対し、宿泊者名簿への正確な記載を働きかけること。
2 日本国内に住所を有しない外国人宿泊者に関しては、宿泊者名簿の国籍及び旅券番号欄への記載を徹底し、旅券の呈示を求めるとともに、旅券の写しを宿泊者名簿とともに保存すること。なお、旅券の写しの保存により、当該宿泊者に関する宿泊者名簿の氏名、国籍及び旅券番号の欄への記載を代替しても差し支えない。
3 営業者の求めにも関わらず、当該宿泊者が旅券の呈示を拒否する場合は、当該措置が国の指導によるものであることを説明して呈示を求め、さらに拒否する場合には、当該宿泊者は旅券不携帯の可能性があるものとして、最寄りの警察署に連絡する等適切な対応を行うこと。
4 警察官からその職務上宿泊者名簿の閲覧請求があった場合には、捜査関係事項照会書の交付の有無に関わらず、当該職務の目的に必要な範囲で協力すること。なお、当該閲覧請求に応じた個人情報の提供は、捜査関係事項照会書の交付を受けない場合であっても、個人情報の保護に関する法律(平成 15 年法律第 57 号)第 23 条第1項第4号に基づく適正な措置であり、本人の同意を得る必要はないものと解される。
パスポートの掲示拒否、保存しないことは許されないルールになっていて安心しました。しかし民泊サービス運営者が相手と結託していたら判らないでしょうね。しかし宿泊者名簿を作成しなかったり、虚偽の名簿を作成するなどの違反をした場合は、三十万円以下の罰金になります。ここに懲役刑が無いのは残念です。
住宅宿泊業法
第七十六条
次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
二
第八条第一項(第三十六条において準用する場合を含む。)、第十三条、第三十七条第一項若しくは第二項、第三十九条又は第一項の規定に違反した者
違反者への罰則
民泊新法が出来る前の民泊サービスに関する罰則は、「旅館業法」の下「無資格の営業」ということで「旅館業法違反」として「六ヶ月以下の懲役、または3万円以下の罰金」とされていました。
旅館業法
第十条 左の各号の一に該当する者は、これを六月以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。
一 第三条第一項の規定に違反して同条同項の規定による許可を受けないで旅館業を経営した者
二 第八条の規定による命令に違反した者
違反してもたかだか「六ヶ月以下の懲役」か「罰金三万円以下」では、違法民泊、いわゆる「闇民泊」は無くせないでしょう。
しかし昨年の平成29年に「旅館業法」は改正され、更に「民泊サービス」に関する新しい法律である「民泊新法」が作られたため、より重い罰則ができました。
例えば、許可無く民泊サービスを運営した場合は、1年以下の懲役、若しくは百万円以下の罰金、又は併科(懲役刑と罰金刑二つを課される)となります。
他に虚偽の情報で届出をしたり、自分ではなく他人に管理をさせたり、住宅宿泊仲介業をさせても罰せられますし、宿泊名簿を作成しない、虚偽の宿泊名簿を作成しても罰せられます。
どの違反によるかで、懲役期間や罰金の金額が変わりますが、「民泊新法」によって細かな罰則が規定されたことは良いことです。
住宅宿泊事業法
第六章 罰則
第七十二条
次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。一
第二十二条第一項の規定に違反して、住宅宿泊管理業を営んだ者
二
不正の手段により第二十二条第一項又は第四十六条第一項の登録を受けた者
三
第三十条又は第五十四条の規定に違反して、他人に住宅宿泊管理業又は住宅宿泊仲介業を営ませた者第七十三条
次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。一
第三条第一項の届出をする場合において虚偽の届出をした者
二
第十六条第一項又は第二項の規定による命令に違反した者後略
条文は細かく長いので、更に詳しいことは罰則規定を定めている住宅宿泊業法の第六章(P47)を読んで下さい。
分譲マンションは「管理規約」改訂が急務
「民泊サービス運営」は登録制で、住宅宿泊業者への厳しいルールが制定されました。しかし「分譲マンション」での「民泊サービス」運営についての記載が見当たりません(見落としではないと思うのですが)
「分譲マンション」は共同住宅ですが、私有財産です。故にそれをどう使うかは所有者の判断、権利によって自由でしょうから、禁止することができないのでしょう。そのため「民泊新法」にも記載が無いと思われます。
ただし、「ガイドライン」には「標識掲示」の項目で、「分譲マンション」における「民泊サービス」運営について触れられており、「分譲マンション」での「民泊サービス運営」が想定されていることは判ります。
共同住宅の場合にあっては、個別の住戸に加え、共用エントランス、集合ポストその他の公衆が認識しやすい箇所へ簡素な標識(※)を掲示することが望ましい。
なお、分譲マンション(住宅がある建物が二以上の区分所有者が存する建物で人の居住の用に供する専有部分のあるものである場合)の場合は、標識の掲示場所等の取扱いについて、予め管理組合と相談することが望ましい。
しかし既に建っている「マンション」の管理規約には、「民泊サービス運営」について触れていないものが殆どで、ある意味抜け穴となっていますから、管理組合と標識について相談する段階になるまで、他の住民は知らないままかもしれません。
その時になって「民泊サービス運営」を止めさせようとしても、「登録」も済んでいる可能性が高く、それを止めるとなるとかなりの労力を要することになるでしょう。
実際、民泊サービス運営トラブルの発生を危惧し、「マンション管理規約」の改訂をして下さいと広報している自治体もあります。
マンション管理規約の改正について(お知らせ)
住宅宿泊事業法の施行に伴い「マンション管理規約」の改正が必要です
分譲マンション管理組合の皆様へ分譲マンションを含めた一般住宅において宿泊サービス(いわゆる民泊)を可能とする「住宅宿泊事業法」が平成29年6月に成立し、平成30年6月15日から施行されます。
このため、分譲マンションにおいても住宅宿泊事業(民泊サービス)が実施され得ることとなりますので、民泊を巡るトラブル防止のためには、民泊に関する規定をマンション管理規約上明確化しておく必要があります。(民泊事業を希望する事業者の届出が始まる平成30年3月15日までに管理規約を改正することが望ましいといえます。)
このホームページには、分譲マンションにおける管理規約改正(民泊関係)に関する資料を掲載しています。
民泊についてまだ対応されていない分譲マンション管理組合の方は、掲載資料を参考に、速やかに対応の検討をお願いいたします。
川崎市:2018年1月16日
住宅宿泊業法の施行に伴うマンション管理規約の改正について(お知らせ)住宅宿泊事業法(民泊関係)の施行に伴う分譲マンションでの管理規約の改正に関するお知らせを掲載しています。
兵庫県宝塚市でも改訂するべきだという広報がでています。
マンション標準管理規約が改正されました。(平成29年8月29日)
マンション標準管理規約とは
マンション標準管理規約とは、管理組合が各マンションの実態に応じて管理規約を制定、変更する際の参考(標準モデル)として国土交通省が作成したものです。
今回の改正について(民泊関係)平成29年6月に住宅宿泊事業法が成立し、今後、分譲マンションにおいても住宅宿泊 事業(いわゆる民泊)が実施され得ることとなります。分譲マンションにおける住宅宿泊事業をめぐるトラブルの防止のためには、住宅宿泊事業を許容するか否かについて、あらかじめマンション管理組合において、区分所有者間でよく御議論いただき、その結果を踏まえて、住宅宿泊事業を許容する、あるいは許容しないかを管理規約上明確化しておくことが望ましいものと考えられます。このため、今般、マンション標準管理規約が改正され、住宅宿泊事業を可能とする場合と禁止する場合の双方の規定例が示されました。
後略
宝塚市
301 Moved Permanently
後になってから「民泊サービス」を差し止めるための裁判が多く起こされる可能性もあるでしょうから、自治体としても看過できないのでしょうね。やはり「マンション管理規約」の改訂は急がなくてはいけません。
マンション管理規約のひな形変更
「マンション管理規約」は国土交通省が公開している「マンション標準管理規約」のひな形を参考に作られているものが殆どです。しかし「民泊サービス」開始に備え、昨年の平成29年8月29日に「マンション標準管理規約」についての改正が行われ、ひな形も変更されました。
参考 住宅宿泊事業に伴う「マンション標準管理規約」の改正について(国土交通省)
1.背景・経緯
住宅宿泊事業法が成立し、今後、分譲マンションにおいても住宅宿泊事業(いわゆる民泊)が実施され得ることとなります。分譲マンションにおける住宅宿泊事業をめぐるトラブルの防止のためには、住宅宿泊事業を許容するか否かについて、あらかじめマンション管理組合において、区分所有者間でよく御議論いただき、その結果を踏まえて、住宅宿泊事業を許容するか否かを管理規約上明確化しておくことが望ましいものと考えられます。
このため、国土交通省では、マンション管理規約のひな型である「マンション標準管理規約」を改正し、住宅宿泊事業を可能とする場合と禁止する場合の双方の規定例を示すこととするものです。2.改正の概要
[1] 住宅宿泊事業の実施を可能とする場合と禁止する場合の条文を提示
→専有部分の用途を定める第12条を改正し、住宅宿泊事業法に基づく住宅宿泊事業を可能とする場合と禁止する場合の双方の規定例を示しました。[2] 関連の留意事項を提示
→「マンション標準管理規約コメント」(解説)において、住宅宿泊事業のうち、住宅宿泊事業者が同じマンション内に居住している等のいわゆる家主居住型のみ可能とする場合等の規定例を示すなど関連の留意事項も示しました。
「マンション標準管理規約」のひな形を変更したのは良いのですが、そもそもマンションの「管理規約」を変更するには住民の3分に2の賛成が必要などといった厳しい条件があるもので、その変更は容易ではありません。
その賛成を取り付けようとしている間に、「民泊サービス」運営の届け出をされ、登録されてしまうと、後から「登録取消」にするには手間と時間が非常に掛かると思われます。
なので、できるだけ3月15日までにマンション住民で「民泊サービス」をどうするのかを早急に話し合い「マンション管理規約」を改訂しましょう。
賃貸マンションでの民泊サービス運営が始まったら
借りて住んでいるマンションで大家(家主)による「民泊サービス」が開始されたら、店子(借家人/住民)にそれを止める術はありません。出来ることはそのマンションから引っ越すことだけです。
女性でも男性でも、両隣が「民泊サービス運営施設」となり、見知らぬ外国人が引っ切りなしに出入りするようになるのは恐ろしいでしょう。実際、民泊での性犯罪は起こっていますから、宿泊者利以外の近隣住民が被害にあう可能性も否めません。
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しかし今後、空き部屋に悩んでいる家主の管理する賃貸マンションで「民泊サービス」運営が増えて行くと思われます。もし引っ越す予定があるなら、その賃貸マンションが「民泊サービス」をしているかどうか、するかどうかの事前チェックをしましょう。
最早、身を守るには「民泊サービス」を行っていないマンションを選び、契約をするようにするしかありません。ただ、「民泊サービス」を嫌がる人が出て行っては賃貸マンション業も大変でしょうから、「民泊サービス」を行わないということを付加価値とするマンションも出るでしょうね。
どちらにせよ、賃貸マンションと契約を結ぶ際には注意が必要です。
京都の民泊サービス条例案を参考にしてはどうか
「マンション管理規約」の変更には住民の意見を取りまとめる時間が必要です。しかし現段階では規約変更が間に合わないマンションも出ると思われます。そこでそういう分譲マンションの救済措置になりそうな条例案がありました。それは京都の条例案です。
ソースをどうぞ。
京都市民泊規制、全国一厳しく 800m内に管理者
来年6月の民泊新法(住宅宿泊事業法)施行に合わせ、京都市が条例や規則として策定する民泊ルールの案が30日、分かった。苦情の対応や緊急時に備え、おおむね10分以内に客室に駆けつけることができる半径800メートルの範囲に管理者らを駐在させる「駆け付け要件」を設定する。市への営業届け出時には、直近3カ月間に無許可営業をしていないことを示す誓約書の提出を求める。
市は、新法で営業が可能になる民泊だけでなく、町家の一棟貸しなど旅館業法の許可を得た民泊についても同じルールを適用する。分譲マンションで営業する場合の規制も盛り込むなど、全国で最も厳しい民泊ルールを目指す。
ルール案は、条例や規則、ガイドラインに盛り込む内容をまとめた。条例の違反者には最大5万円の過料を課す。条例案は来年2月の市議会に提案する。
駆け付け要件は、苦情が出た場合や緊急時に対応しない施設が目立つため、管理者や事業者に「迅速に駆け付け、適切に対応できる範囲」での駐在を求める。
海外の事業者には、日本国内に代理人を置くことなど、市の指導に対応できる体制づくりを要請する。インターネット仲介サイトを利用する場合は、施設の住所や地図を詳細に掲載させる。
ホテルや旅館の立地が制限される「住居専用地域」では、民泊の年間営業期間を1、2月の約60日に限る。町家に関しては、保全や活用につなげるため例外的に新法の上限となる180日まで認める。
分譲マンションでの営業を制約するため、管理組合が民泊営業を禁止していないことを示す書類の提出を求める。また、宿泊者の有無や人数の掲示も義務づける。
その他、ルールに沿って宿泊サービスを提供する優良な施設を認証する制度も設ける。
◇京都市がまとめた新たな民泊ルール案の概要
・住居専用地域は年間営業期間を1、2月の約60日間に限る。町家は例外で新法上限の180日間まで認める。
・分譲マンションでは、管理組合が民泊を禁止していないことを示す書類の提出を求める。
・苦情対応などで管理者らが10分以内に客室へ駆け付けることができるよう半径800メートル以内の駐在を求める。
・営業の届け出時には、直近3カ月間、無許可営業を行っていないことを示す誓約書を提出させる。
・町家の一棟貸しなど旅館業法の許可を得た民泊にも同じルールを適用する。京都新聞:【 2017年12月01日 06時00分 】
http://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20171130000227
「マンション管理規約」を改定せずとも「禁止されていない」という書類を出させるという発想は見事です。これで「いつのまにか届出されて登録されていた。」という事態を避けることができますね。
ただこれはまだ「民泊ルール案」で、可決された条例ではありませんから、「分譲マンション」での「民泊サービス」運営がどうなるのか予断を許しません。
分譲マンションに住んでいる方は、居住している自治体がどういう条例を制定するのかを厳しくチェックしておきましょう。
既に日本の民泊サービスは悪用されはじめている
先日、韓国人が日本の「民泊サービス」を根城として空き巣を繰り返していました事件がありました。
民泊拠点に滞在「毎日のように盗み」韓国で転売
民泊を利用して日本に滞在し、空き巣を繰り返したとして、警視庁は17日、韓国籍の無職の男(40)を窃盗などの容疑で逮捕したと発表した。
同庁幹部によると、男は先月15日夕、目黒区の民家2軒に窓ガラスを割って侵入し、現金計127万円や高級腕時計など計54点(時価計約500万円相当)を盗んだ疑い。
男は新宿区大久保の民泊施設に宿泊していたといい、「毎日のように盗みをしていた。盗品は韓国で転売した」と供述している。昨年10月以降、出入国を繰り返していて、同庁はほかに約30件の空き巣に関与したとみている。
読売新聞:2018年01月18日 08時16分
http://www.yomiuri.co.jp/national/20180118-OYT1T50015.html
窃盗だけでなく、強姦事件もいずれ起こるのではないでしょうか。それに他の記事でも触れていますが、売春宿として利用していたこともあります。
犯罪の温床になっている「民泊サービス施設」が増えるのは間違いないでしょう。自分の身を守るために、もしも隣の部屋から不特定多数の外国人が出入りしていたら、迷わず通報しましょう。
大阪の闇民泊で発生した女性行方不明事件(2018/2/25 追加)
2018/2/25 追記
大阪の闇民泊で兵庫県三田市の20代女性が行方不明になり、米国籍の男が逮捕・死体遺棄容疑で逮捕されています。この事件では、行方を絶った大阪市西成区の闇民泊と、男が逮捕された奈良県の民泊、そして人の頭部が見つかった東成区の宿泊施設の三カ所が出ています。
詳細は取り上げた記事をどうぞ
今すぐ管理組合に確認を!
事件の解明はまだされていませんが、民泊でこのような凶悪な事件が発生していることから、やはり「民泊サービス」は危険だと言わざるを得ません。
それに女性が行方不明になったのは、マンションオーナーの息子が「無許可」で運営していた「闇民泊」です。このマンションの住民の皆さんも知らなかったのではないでしょうか。
住んでいる隣の部屋で、女性を殺害し、その遺体を解体していたとしたら・・・。マンションのお住まいの方は、今すぐに管理組合に「闇民泊」の運営をしていないかの確認をした方が良いでしょう。
最後にひとこと
いよいよ「民泊サービス」が「民泊新法」に則って営業されるようになります。それに伴い犯罪も発生するでしょう。近くに「民泊サービス」運営があるかどうか、近隣住民は注意し、もしあった場合は警戒を怠らないようにしましょう。